アメリカ大統領がトランプ氏からバイデン氏に代わった。新型コロナウイルス対策など、地球規模で取り組む必要がある問題が山積みの今、アメリカはこれからどう変わるのだろうか。ジュニアエラ2月号は「アメリカ大統領と世界のリーダー」を特集。小村田義之・朝日新聞論説委員監修のもと、2人の新旧大統領について分析した。
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4年に1度のアメリカ大統領選挙が2020年11月に行われ、民主党候補で元副大統領のジョー・バイデン氏が、共和党候補で現職大統領のドナルド・トランプ氏に勝利した。
経済力も軍事力も世界一のアメリカは、世界に絶大な影響力がある。今後、何が変わるのか、二人を比較しながら考えてみよう。
トランプ氏は、「米国第一主義」を掲げ、自国にとって今すぐ得になる政策を強行し、アメリカがこれまで各国と協調して築いてきた国際秩序を壊してしまった。たとえば経済活動のさまたげになるとして、地球温暖化を加速させないための国際的なルールを定めたパリ協定から一方的に離脱したり、今まではアメリカが貿易の自由化を主導してきたのに、「中国はズルをしている」として、輸入品に高い関税をかける保護貿易に一部転換したりした。
国内では、人種間の分断を助長した。もともとトランプ氏は、2期8年を務めた黒人初の大統領バラク・オバマ氏(民主党)の反動で当選した面があった。本来、労働者の味方であるはずの民主党政権下で暮らしがよくならず、見捨てられたと感じた白人労働者層に、トランプ氏は「おれはあいつら民主党のエリートとは違う。おまえたちを見ているぜ」とアピールして、支持者を増やした。敵をつくって、味方を増やすのがトランプ流。有色人種や移民をけなす暴言は、一部の白人有権者を熱狂させたが、一方で、人種差別を助長してしまった。
バイデン新大統領は、正統派の政治家だ。オバマ政権で副大統領を務め、国際協調路線を継ぐ。地味だが、国内の分断をあおるような差別発言はしない。ノーマルなアメリカに戻したいという人々の希望が、バイデン氏を大統領に押し上げた。
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