小幡 確かに。近所に5歳上のいとこがいて、その子も同じころ不登校になっていたので、いつも一緒につるんでいました。2人ともゲームとマンガが好きでとにかく毎日ゲーム三昧。ゲーム「信長の野望」で歴史の面白さに目覚め、カードゲーム「遊戯王」に夢中になってゲームショップに通ううちに友だちもできた。そしてゲーム大会を手伝うようにもなりました。高校で起業したイベント会社も、この経験が生きています。
高濱 小幡くんの場合は、学校よりもっと面白い場所がちゃんとあった。そこには友人もいるし、夢中になれることもあった。居場所と夢中、この二つがものすごく大きいんだ。
小幡 不登校イコールひきこもりって勘違いする人が多いんですが、そんなこと全然ないんです。僕は、正しい不登校のやりかたを見つければいいんだと思ってます。学校の役割って知識を身につけることと友だちを作ることの二つだと思うんですよ。ならばこの二つを得られる場がほかにあるならそれでいい。不登校が問題なんじゃなくて、不登校になったあとが大切なんだと。
高濱 そうだよ。そうなんだけど、そんなに甘くないという現実も実際にある。学校以外に安心できる居場所と夢中になれるものがあって、いとこという仲間や友人がいたこと、さらにそうした経験を生かす能力もあったという自分のラッキーさと優秀さを簡単に一般化してはいけないと思う。子どもが学校に行きたくないからといって親などは「いいよ、わかった」とすぐには言えない。やっぱりその子次第だし、状況にもよる。その子のハートをしっかり見て、本質を見極めないとね。そもそもお互いの信頼関係がないと、何を言ってもダメだし。
小幡 そういえば、不登校になってからも学校の先生がうちに定期的に来ていたんですが、学校に来るべきというのが大前提だから、とてもいやでした。でも一人だけ、週に1~2回「ゲームしよう」って来る女の先生がいたんです。学校に来いとは一言も言わずに僕とトランプだけして帰っていった。その先生のことはすごく信頼してました。実は僕、歴史好きが高じて修学旅行だけは行ったんですが、その先生のおかげもあったかも。せっかくだから修学旅行くらい行こうかなと。
高濱 そういうことってあるんですよ。まずは信頼関係なんだ。本人がホッとできる場所が1カ所でもあれば大丈夫、なんとかなるんです。
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