矢萩:職員室の雰囲気は本当に大事。先生たちがきちんとコミュニケーション取れているかどうか。これこそ学校運営の肝ですから。

安浪:職員室自体が、先生同士でコミュニケーションを取りやすい机の配置になっているかも一目でわかりますしね。ついでに、不必要に書類が積み上がっていて、隣の先生と壁を作っている職員室は危ない(笑)。

矢萩:まあ、それは私立も公立も同じだけどね。

■公立に行ってもやってきたことは絶対無駄にならない

安浪:逆に、公立が私立より優れている点って、これはもう究極のダイバーシティーがあることですね。私立はどうしても似たような所得層、似たような考えを持つ親御さんの子どもが集まってくるので、それが居心地いい、というのもあるかもしれませんが。

矢萩:質問者さんの相談に戻ると、志望校に合格できなかったら地元の公立、と決めなくても、あと一年の間にいろいろ学校を見てみてもいいんじゃないかな。それこそ偏差値にとらわれずに。結果、公立に行くことになってもやってきたことは全然無駄にはならないので。

安浪:そうそう。ちなみに勉強について言えば、真剣に中学受験の勉強をした上で公立中学に進学したらアドバンテージは絶対高いですから。勉強に余裕があるので、部活や生徒会などにも力を入れられるし。実際、中学受験の勉強をしてきたけれど志望校にご縁がなくて公立に進学し、3年後の高校受験で、びっくりするような合格を取ってきた子を何人も見ています。

矢萩:地元の中学がどんな状態かも知り合いに聞いてみた方がいいですね。

安浪:学力上位層が抜けちゃって、授業がまともに成立しないところもあるみたいですからね。逆にそれが「早くここから抜け出してやる」という勉強のモチベーションになる子もいるから、本当にそれぞれ。でも、何度も言いますけれど、「私立=桃源郷」じゃない。

■学校の中身を知っている塾の先生はわずか

矢萩:塾の先生はやっぱり「私立がいいよ」っていう話をすると思いますけど、塾の先生で私立にどんな先生がいて、どんな授業しているのか知っている人って本当にわずかです。試験にどんな問題が出てくるか、ということは皆プロだから知っています。でも塾の先生から「あの学校の先生と友達だからよく知っているよ」という話はほとんど聞かないですよね。となるとやっぱりイメージで学校のこと見ているんですよ。そこを親もしっかり認識しないとね。

安浪:私立には学費を払う以上、理想を何でもかんでも求めがちですが、そもそも学校に全部を求めるのは難しいです。

矢萩:そうですね。ベストを選ぼうとするより、ベターを選んでいこう、とするイメージかな。それを親子で試行錯誤してやっていく、そのプロセスにこそ意義があると思います。親子でステップアップできる経験になりますしね。

(構成/教育エディター・江口祐子)

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安浪京子 矢萩邦彦
安浪京子 矢萩邦彦

安浪京子(やすなみ・きょうこ)/「きょうこ先生」として親しまれている中学受験専門カウンセラー、算数教育家。佐藤亮子さんとの共著『親がやるべき受験サポート』(朝日新聞出版)が好評。最新刊は『中学受験にチャレンジするきみへ 勉強とメンタルW必勝法』(大和書房)。

矢萩邦彦(やはぎ・くにひこ)/「知窓学舎」塾長、多摩大学大学院客員教授、実践教育ジャーナリスト。「探究学習」「リベラルアーツ」の第一人者として小学生から大学生、社会人まで指導。著書に『子どもが「学びたくなる」育て方』(ダイヤモンド社)『新装改訂版 中学受験を考えたときに読む本 教育のプロフェッショナルと考える保護者のための「正しい知識とマインドセット」』(二見書房)。

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