安浪:公立の先生の中には自分たちで教材を作ろう、と動こうとしても「他の先生と差が出てしまう」ということで潰されてしまった人も多いようです。
矢萩:とりあえず今の時点で実現しやすい平等を取るっていうのが公立の特徴です。ただ間違えちゃいけないのはそれが本当に平等なのか、って話で。行政的な大義名分として「これだったら平等です」と言えるかどうかで判断しているだけです。
安浪:保護者に「それは不公平じゃないですか」って突っ込まれないかどうかっていう判断基準ですよね。
矢萩:そう。そこに本当に意味があるかどうかというのは二の次三の次で。いっぽう私立はパーッと対応していましたね。まあ内容の良し悪しはあれ、何らかの対策をやった学校が多かったです。
安浪:私立の先生からよくお聞きするのは、「公立は平等、私立は自由」ということ。私立は学校裁量で何でもできる。このコロナ禍で中学受験の人気が上がった理由もそこなのかな、と思います。
矢萩:今まで中学受験に関心がなかった新たな層を開拓した感じはありますね。
■私立も「桃源郷」ではない
安浪:あと公立の先生は公務員なので、勤務校がコロコロ変わりますよね。だから、新しい取り組みをしても続けられないという嘆きも聞きます。校長先生が何かしら学校改革をしても、3~4年後には別の学校に移動になる。新しい校長先生がまた一から別のことを始めるので、それまでの積み上げが継承されない、と…。とはいえ、私立も桃源郷ではなくて、私立の方が公立より絶対優れている、ということはない。こんなに学費を払っているのに、何この内容?と腹立たしく思っている人もいると思います。
矢萩:そうそう。私立は自由だからこそバラつきも大きいんですよ。
安浪:でも、そこはパンフレットを見るだけではわからないんですよね。だから、設備や大学合格実績だけを見るのではなく、実際に学校に足を運んで、先生の話や在校生の話を聞いたりして、雰囲気を掴むしかない。とある私立の先生は「職員室を見ればだいたいわかる」と仰っていました。
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