■昨今登場した「SMART」とは
代田さん、白山さん以降も大学コピーライターは現れたが、「日東駒専」「MARCH」のように全国的に普及した作品は登場していない。
首都圏の予備校職員がこんなフレーズを教えてくれた。
「中東和平成立は就職支援に力を入れています」
中央学院大、東京国際大、和光大、平成国際大、立正大の5大学のことである。ローカル色が強く、全国区にはなりにくい。
昨今では、新しい大学グループ名として「SMART」が生まれている。中学受験雑誌の編集長による命名だ。Sはソフィアの上智大、それ続いて明治大、青山学院大、立教大、東京理科大を並べたものである。
だが、いまひとつ定着しきれてはいない。
大学のグループ名について、当の大学はどう思っているか。
話題になることで知名度が上がると好意的に受け止めるところはある。しかし、「この大学と一緒にされたくない」と反発する大学は少なくなかった。大学グループ名でくくられてしまっては、大学のほんとうの姿は伝わらないと、訴えていた。
2020年、ネットニュースでこんな見出しが登場した。
「大学の序列 明治大がMARCH、SMARTから抜け『早慶明』に?」(「NEWSポストセブン」2020年10月18日 )
この記事に明治大関係者は喜んでいた。
こうしたグルーピングについて、大学は黙って見守るしかないのだろうか。いや、そんなことはないと言わんばかりに、攻めの姿勢を見せた大学があった。
2017年正月、近畿大は大手紙の関西版で「早慶近」と見出しをつけた全面広告を掲載している。インパクト十分だった。
大学をグループのなかで位置づけられること、まして、それで評価されることは、どの大学も望んでいないはずだ。しかし、同じグループのなかで切磋琢磨してレベルを向上させるという効果はある。大学グループより、一大学として常に語られるように教育、研究で際立った特徴を出してほしい。
(教育ジャーナリスト・小林哲夫)