オミクロン株の出現でコロナ感染が急拡大する中で実施された今年の中学入試ですが、受験者数は8年連続での上昇となりました。安全志向が働き、中堅上位から下位校のボリュームゾーンで受験者数が増加。倍率も上がり、受験生にとっては厳しい入試になりました。

MENU ■中学受験を急遽決めた家庭が増加 ■埼玉県の学校が躍進

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 コロナ禍での2年目の中学入試となった2022年。首都圏私立・国立中学受験者数は、昨年を上回って5万1100人となり、受験率も昨年の16.86%から17.30%に上昇した(首都圏模試センター調べ)。受験者数、受験率ともに8年連続で増加しており、いずれも過去25年間で最高を記録した。コロナの感染拡大により全国で一斉休校が行われた20年春からオンライン授業を開始するなど、コロナ禍での対応が、私学に対する信頼を高めた結果のようだ。

 首都圏模試センター取締役教育研究所長の北一成さんは、「大学入試改革で、24年度から入試が本格的に変わると言われています。私立のほうが柔軟に対応してくれるだろうという期待感があるようです」と分析する。

 安田教育研究所代表の安田理さんも、私立の教育を支持する保護者が増えていると、次のように言う。

「グローバル教育、ICT教育は私立が一歩先を行っている。例年募集に苦労する易しい部類の学校も志願者が増加しており、『どうしても私立に入れたい』という家庭の強い意志が感じられます」

■中学受験を急遽決めた家庭が増加

 今年の志願者の特徴は、チャレンジをやめて手堅く合格を狙う安全志向だ。そのため難関校では例年並みか減少の傾向がみられたが、中堅上位から下位校のボリュームゾーンの一部の学校に志願者が集まった。森上教育研究所代表の森上展安さんは、その理由を次のように話す。

「もともとは地元の公立中学に進学するつもりだったのを急遽中学受験することに決め、小5や小6から塾通いを始めた受験生は、難関校を狙えるようなレベルには届かなかったのでしょう。また、難関校は広域から受験生を集めますが、コロナ禍で長時間の移動を控えた受験生も多かった。比較的合格しやすい、近隣の中学校を選ぶ受験生が増加したのでは」

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柿崎明子
ライター 柿崎明子
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