朝から晩まで「なんで?」「どうして?」を繰り返す4歳の娘を持つ40代の父親。最近はロシアによるウクライナ侵攻について質問攻めにあい、答えられず困っています。「論語パパ」こと中国文献学者の山口謠司先生が、「論語」から格言を選んで現代の親の悩みに答える本連載。今回の父親へのアドバイスはいかに。

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【相談者:4歳の娘を持つ40代の父親】

 興味が広がり、あらゆることを不思議に思い、朝から晩まで質問したがる4歳の娘がいます。最近は、ニュース映像でウクライナから避難する子どもたちを見て「あの子たちはなにをしているの?」「ロシア人はどうしてよその人の家に勝手に入るの?」とエンドレスで聞いてきます。これだけテレビでウクライナのニュースが流れると、見せないということもできず、適当なつくり話でかわすこともできず困っています。「悪いこと」だと教えたとして、「ではなぜ止められないの?」と聞かれたらどう答えればいいのか……。4歳にわかるような話で、よい答えはないものでしょうか。

【論語パパが選んだ言葉は?】

・「子張(しちょう)、行われんことを問う。子曰(い)わく、言忠信(げんちゅうしん)、行篤敬(こうとくけい)なれば、蛮貊(ばんぱく)の邦(くに)と雖(いえど)も行われん。言忠信ならず、行篤敬ならずば、州里(しゅうり)と雖も行われんや」(衛霊公第十五)

・「子曰わく、已(や)んぬるかな。吾(わ)れ未(い)まだ能(よ)く其(そ)の過ちを見て、而(しか)も内に自(み)ずから訟(せ)むる者を見ざるなり」(公冶長第五)

【現代語訳】

・子張が孔子に尋ねた。「どうすれば自分の行いが正しいところに達するのでしょうか」

孔子がこう答えた。「言うことが誠実で、行動が敬虔であれば、異民族の国で自分の思った通りに行っても人々は従うだろう。しかし、もし言うことに誠意がなく、行いが軽薄であれば、自分の郷里であったとしても、人々が自分に従うことはないだろう」

・「あぁ、なんとも仕方のないことで、だめだなあ。私は、自分で過失を自覚して反省する、自責の念の強い人をまだ見たことがない」

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山口謠司
山口謠司

山口謠司(やまぐち・ようじ)/中国文献学者。平成国際大学新学部設置準備室学術顧問。大東文化大学名誉教授。1963年、長崎県生まれ。同大学大学院、英ケンブリッジ大学東洋学部共同研究員などを経て、現職。NHK番組「チコちゃんに叱られる!」やラジオ番組での簡潔かつユーモラスな解説が人気を集める。2017年、著書『日本語を作った男 上田万年とその時代』で第29回和辻哲郎文化賞受賞。著書や監修に『眠れなくなるほど面白い 図解論語』(日本文芸社)など多数。2021年12月に監修を務めた『チコちゃんと学ぶ チコっと論語』(河出書房新社)が発売。ラジオパーソナリティ、イラストレーター、書家としても活動。フランス人の妻と、大学生の息子の3人家族。

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