そして私自身、中高生時代に読んだらもっと友だち関係がラクになれただろうな、と思ったのが『友だち幻想』(菅野仁著・ちくまプリマー文庫)です。この本は2008年に発売され、数々のメディアに取り上げられ、ロングセラーになっている本です。

「基本的な発想として、共同体的な凝集された親しさという関係から離れて、もう少し人と人との距離感を丁寧に見つめ直したり、気の合わない人とでも一緒にいる作法というものをきちんと考えたほうがよいと思うのです」(『友だち幻想』より)

「みんなと仲良くしなければならない」「友だちは多いほうがいい」という学校教育で教え込まれたプレッシャーから解放され、単なるネットリテラシーではないSNS上のコミュニケーション、人との距離感の取り方などを教えてくれます。中高生向けに書かれた本ですが、大人、特に子育て中の親が読むと役に立つ知識が多い一冊です。

「周りに合わせることも必要だけれど、まずは自分自身の気持ちを大切にする。それがたとえネガティブな感情であれ、それこそあなた自身の大切な部分。否定することはない」

 そんなメッセージを子どもの年齢に合わせ、伝え続けることが今の時代は大事だと思いませんか。そうすれば、子どもは大きくなってから人間関係に悩むことが減るかもしれません。

(文/教育エディター・江口祐子)

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江口 祐子

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