渡り鳥は、どうして数千キロメートルも離れた場所まで迷わずに旅ができるのだろう? これまで地磁気(※)から東西南北の方位を知るのではないかと考えられてきたが、そのしくみはわかっていなかった。動物の脳を研究する脳科学者の高橋晋教授(同志社大学)と 動物の行動を研究する生態学者の依田憲教授(名古屋大学)は、渡り鳥の脳から頭が北を向いたときにだけ活動が盛んになる細胞を見つけ、謎の解明に新たな一歩を踏み出した!(現在好評発売中の『ジュニアエラ5月号』の記事から紹介します。)
【図】渡り鳥のオオミズナギドリの幼鳥と親鳥は飛ぶコース異なる(※)地磁気:地球はそれ自体が大きな磁石で、北極付近がS極、南極付近がN極となっている。方位磁針のN極が北を向くのは、北極付近のS極にひかれるからだ。このような地球が生み出す力を地磁気という。
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■渡りの経験がない幼鳥は、地磁気だけを頼りに飛ぶ!?
渡り鳥の脳のしくみを解明するために高橋晋教授らが着目したのは、新潟県の粟島に生息するオオミズナギドリという海鳥だ。
夏には日本付近で子を産み育て、冬には南のインドネシア方面へ移動する渡り鳥で、その渡りの際に飛ぶコースが、親鳥と新たに生まれた幼鳥では大きく違っている。
先に出発する親鳥の群れは、日本列島の南北を回り込むように少し遠回りし、海上を飛んで南へ向かう。これに対し、遅れて出発する幼鳥の群れは、粟島からまっすぐ南を目指して本州の山を越えるように飛んでいく。海上を飛ぶのに比べてずっと危険だ。
この違いについて、高橋教授らは次のように考えた。親鳥は過去の渡りの経験から、安全な海上を飛ぶルートを知っている。
一方、渡りの経験がない幼鳥は、生まれ持った地磁気を感知する能力だけを頼りに目的地を目指さなければならないから、危険な山越えをするのではないか? そんなオオミズナギドリの幼鳥こそ、地磁気を感知する脳内の細胞のしくみを調べるのにうってつけだと考え、数年前から研究をスタートさせた。
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