「あるとき、文意を丁寧につかもうと、助詞を際立たせて大きな声でゆっくり読んでみたのです。すると、単語一つひとつがクリアに聞こえてくることに気がつきました。滑らかに読むことをよしとする、学校の音読とは正反対の読み方の『助詞を強調させて読む(助詞強調音読)』です。助詞を意識すると、名詞や動詞など単語の区切りがはっきりと分かり、文章の音が自分の頭で鳴り始めました。しかも記憶されるうえに内容も理解できる。自分の脳の中で聴覚記憶が育っているのだと思いました。音読は、目で文字を見る(視覚)、口を動かして声に出す(運動)、自分の声を聞く(聴覚)という3つの感覚を使って読むのが第1段階。次に、読んだ言葉が脳にインプットされ(記憶)、人に伝わるように読める(伝達)ようになる。この脳機能から見た音読の発達段階を知っておけば、どうしたら自分の声を聞きながら読むことができるようになるのかが理解できると思いました」

 加藤先生は自身の体験から、音読が苦手な子や大人にこうアドバイスします。

「音読困難の症状は、『脳活性おんどく法』を使って短い文を読めば、確実に改善します。子どもだけでなく、大人になってからでも上手になります。40歳代から私自身もさらに改善しつつあります。音読が苦手な子どもには『ひらがな読みが苦手』『カタカナ読みが苦手』『漢字読みが苦手』と、さまざまなケースがあります。まずは、一生治らない障害だと誤って理解しないこと。どの状態であっても、助詞をはっきりと言って『名詞』『動詞』を自分の耳で聞いて理解できるようにさせてあげると、文章を理解する能力が上がるのが分かります。日常でも友だちの言いたいことが分かるようになり、トラブルが減るケースをたくさん見てきました。短い文章でいいので、丁寧に声に出して読んだり、内容について楽しみが広がったりするようサポートしてあげてほしいですね」

(AERA with Kids編集部・久次律子)

○加藤俊徳…1万人以上の脳を分析・研究した経験を持つ脳内科医。小児科専門医。医学博士。加藤プラチナクリニック院長。昭和大学客員教授。「脳番地トレーニング」の提唱者。発達脳科学・MRI脳画像診断の専門家で、自らの体験からひらがな音読困難症状を改善する「脳活性おんどく法」を考案。著書・監修書に、「脳活性おんどく法」に基づく『かしこい脳が育つ!1話5分 おんどく』シリーズ(世界文化社)や『頭がよくなる! 寝るまえ1分おんどく366日』(西東社)、『1万人の脳を見た名医が教える すごい左利き』(ダイヤモンド社)など、ベストセラー多数。

AERA with Kids (アエラ ウィズ キッズ) 2022年 夏号 [雑誌]

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