もうすぐ夏休みが終わり、新学期が始まります。夏休み明けは、日本では不登校の子どもが増える時期ですが、他国の不登校事情はどうなっているのでしょうか。息子さんが不登校だったという、アメリカ・ユタ州のライター、トロリオ牧さんがご自身の体験をつづってくれました。※後編<アメリカでわが子が「不登校」に そんなとき、親はどうする?【体験記】>に続く

MENU
全米でも子育てに理解があるユタ州
アメリカで「不登校」は存在しない それでも、親としては受け入れがたい現実

*  *  *

 沖縄で国際結婚をして2001年に渡米。ユタ州で2人の子どもたちを育て、不登校だった息子と、親としてどう向き合ってきたか。まずは当事者としての体験談をご紹介します。

全米でも子育てに理解があるユタ州

「家族」や「子育て」がとても重視されているアメリカ・ユタ州。その背景には、地域に根づいた宗教的な価値観が大きく関係しています。

 ユタ州では、未日聖徒イエス・キリスト教会(通称モルモン教)の信仰を持つ人々が多く、「家族は人生の中心」という考え方がとても大切にされています。この教えのもとでは、若いうちに結婚し、子どもを育てることが人生における重要な使命とされていて、大家族であることを喜びとする文化も根強くあります。

 そのため、地域社会全体にも「子育ては一人ではなく、みんなでするもの」という意識が自然と根づいていて、子育て家庭への理解や支援の空気感が広がっているのです。

 そうした地域性の影響もあり、ユタ州は出生率が全米トップクラス。子どもの割合が多く、学校に通う児童生徒の数も年々増加しています。

 アメリカ合衆国国勢調査局のサイトによると、ユタ州は2023年の時点で18歳未満の子どもが、全人口の約27.3%(全米平均が約21.7%)を占めているそうです。

 さらに新興住宅市場の急成長も加わり、地域の学校に通う子どもの数がいっきに増えるケースが多発しています。そのため新校舎であっても、生徒数の想定を超えることがあるのです。新校舎の完成時点では十分な教室数があったとしても、数年以内に収容可能人数を超えてしまうため、プレハブ教室が必要になるケースもあります。

小学校の敷地内にずらりと並ぶプレハブ教室
小学校の敷地内にずらりと並ぶプレハブ教室
次のページへ「不登校」に対する日米の認識の違いとは?
著者 開く閉じる
トロリオ牧
アメリカ・ユタ州在住ライター トロリオ牧

2001年渡米、ユタ州ウチナー民間大使。アメリカ空軍認定の自宅を利用した家庭的保育を運営後、児童発達センターで子どもの発達支援・保育に携わる。アメリカ政府職員として17年間務めるが、パンデミックをきっかけに「悔いのない生き方」を選び2023年9月に辞職。現在はNHKラジオ出演や日本のWebメディアで執筆など、幅広く活動中。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」会員。

1 2