――感染しやすいのは、どのような人ですか?

 誰でも感染する可能性はありますが、最も多いのが5~14歳の小児で66%を占めます。おそらく子どもは野良猫との接触頻度が高く、無防備な状態で触りますし、好奇心が強いために過剰に触って猫を興奮させてしまい、ひっかかれたりかまれたりするのではないでしょうか。また、全国的に調査をすると、西日本のほうが猫ひっかき病の発症が多い傾向があります。これは、北海道などの寒い地域では、細菌の運び屋となるネコノミが少ないことと関連しています。

――そもそも猫ひっかき病は、どのように感染するのですか?

 猫ひっかき病の原因となるのが「バルトネラ・ヘンセレ」という細菌です。この細菌の運び屋となるのがネコノミで、猫や犬などの動物に寄生して血液を吸うと、赤血球の中にいるバルトネラ・ヘンセレに感染します。この細菌はノミの糞(ふん)とともに排出されますが、猫はグルーミング(毛づくろい)をするので、体表についた糞の中の細菌が口の中や爪にも付着します。猫にひっかかれたり、かまれたりすれば、その傷から人間にも感染します。また猫に触れた手で自分の目をこすったり、指先に傷ができていたりすると、感染する可能性があります。

――飼い猫でも感染していることはあるのでしょうか。

 野良猫のほうが圧倒的に感染している可能性は高いですが、飼い猫も複数の研究結果から10%程度は感染していると考えられています。猫ひっかき病は秋から冬にかけて多くなるのですが、これはネコノミの繁殖期である夏に猫が感染し、寒くなると室内にいて飼い主と接触する機会が多くなるためだと考えられます。

猫に触れたらせっけんで手洗いが基本

――感染しないためにできることはありますか?

 子どもには、野良猫に絶対に触れないように日頃から伝えておくことが大事です。動物からの感染症は、猫ひっかき病以外にもありますので、触れないにこしたことはありません。飼い猫はできるだけ外には出さないようにして、濃厚接触もできるだけ避けたほうがいいでしょう。飼い猫については、清潔にしておくこと、ひっかかれても傷ができないように定期的に爪を切ることがポイントです。

猫の爪を切るときに猫がおとなしくなる「猫マスク」というグッズも登場(提供:クロス・クローバー・ジャパン)
猫の爪を切るときに猫がおとなしくなる「猫マスク」というグッズも登場(提供:クロス・クローバー・ジャパン)
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