子どもから野良猫に「ひっかかれた」「かまれた」と言われたら、注意したいのが「猫ひっかき病」です。猫から人間に広がる感染症で、リンパ節が腫れたり、発熱が長期間続いたりすることもあります。猫ひっかき病研究の第一人者である、山口大学の常岡英弘教授に症状や対策について聞きました。
【閲覧注意】猫ひっかき病によるリンパ節腫大、肝肉芽腫の症状はこちらリンパ節が腫れるほか重症例も
――猫ひっかき病とは、どのような病気ですか?
その名のとおり、猫にひっかかれたり、かまれたりしたことで発症する感染症です。猫が保有している細菌に感染することが原因で、猫のからだに触れただけで感染するケースもあります。犬から人間に感染する例もありますが、圧倒的に多いのが猫からの感染です。近年のペットブームによってペットとの濃厚接触が増え、問題となっています。
――感染すると、どのような症状が出ますか?
典型的なのが「猫にひっかかれた1週間後くらいにリンパ節が腫れる」という症状です。ひっかかれて3日から1週間後くらいに、丘疹(きゅうしん。皮膚にできる直径1cm以下の隆起)ができ、さらに1~2週間後にひっかかれた部位に一番近いリンパ節が腫れます。例えば手や腕であれば脇のリンパ節、足であれば股関節のリンパ節が腫れます。腫れた部分に痛みが出るほか、微熱や全身倦怠感(けんたいかん)、食欲不振、頭痛などを伴うこともあります。

一方、頻度は低いですが、「非定型例」といって視神経網膜炎となって視力が低下したり、肝臓や脾臓(ひぞう)に「しこり」のような炎症の一種である肉芽腫(にくげしゅ)ができたりすることもあります。そのほか不明熱や脳症、心内膜炎など症状はさまざまです。この場合に、やっかいなのが、リンパ節が腫れない場合もあることです。発熱や全身倦怠感が1カ月以上続き、病院を受診しても原因がわからず、腹部エコーで肉芽腫が見つかって検査をしたところ、猫ひっかき病と診断されたというケースもあります。私たちの研究では、リンパ節が腫れないケースのほうが、発熱期間が長く、合併症が多いことがわかっています。
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