以前、バリ島に行ったときに、ローカルの人々がのんびり過ごすビーチのそばをレンタル自転車で走りました。そこはリゾート地というより、人々の生活が感じられる素朴な雰囲気。娘は高級ホテルが立ち並ぶ地域も見ていたので、そのギャップに何か思うところがあったようです。「ここの人たちはみんな貧しくても頑張ってるの?」と悲しそうに言うので、どう答えるのが正解なのかはわからなかったけれど、世界には豊かな国ばかりではないことや、お金=幸せではない、ということを話し合う良いきっかけになりました。

 自分の居場所は一つではないことを、旅を通して感じてほしい

 ――旅から学ぶことは多いですね。

 私自身も、ひとり旅をしてさまざまな場所で人々の生活に触れ、心が救われた経験があります。デビューしてから10年ほどたったころ、ため込んでいた我慢が限界を超えてしまい、事務所を辞めたことで、それまでやってきた仕事をほとんど失ったことがありました。18歳からこの世界しか知らなかった私にとって、とてもつらい時期でしたが、そんな不安から救ってくれたのが、旅でした。

旅先のミャンマーでのんびり過ごす眞鍋さん(中央)。
旅先のミャンマーでのんびり過ごす眞鍋さん(中央)。

 世界を歩いていろいろな文化に触れるのが楽しくて、ネガティブなことを考える暇なんてなかったし、さまざまな地で、そこに住む人々がそれぞれの暮らしを営んでいるのを見ていると「ああ、居場所は日本だけじゃないし芸能界だけじゃないんだな」と、いい意味で開き直れたのです。なので、その先の生活は心配でしたが、それまでためていたお金はどんどん旅行に注ぎ込みました(笑)。結果的に、かけがえのない経験ができたと思っています。

 娘もこの先、何か嫌になってしまうことがあるかもしれない。でもそんなときに「自分の居場所は世界中にいくらでもある」ということを思い出してほしい。旅を通して、娘にもそういう感覚が育ってくれたらいいなと願っています。

(取材・文/三宅智佳)

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三宅智佳
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