夏休みに入ると、新学期が待ち遠しく感じるくらいでした。親子遠足で牧場に行ったことも楽しかった思い出のひとつです。
集団生活は難しいこともたくさんあったけれど、とまどいながらも僕なりに、少しずつ成長することができました。
僕は幼稚園で、人との関わりの楽しさを知ることができました。
――東田さんは、今、文字盤を使って話をしたり、本を書いたり、たくさんの素敵な絵を描いていらっしゃいます。幼稚園で学んだことが原点になっているのでしょうか?
僕はみんなのように話すことができません。気持ちを人に伝えようとすると、頭の中が真っ白になってしまうのです。試行錯誤の結果、パソコンのキーボードと同じ並びのアルファベットを画用紙に書いた文字盤をつかいながら言葉を発信しています。文字を見ることで、忘れてしまう言葉を思い出しているのです。
周りの人たちの温かいまなざしややさしさのおかげで、自分の気持ちを人に伝えることをあきらめずにいられたのだと思います。
僕は幼稚園の時、「絵を描きましょう」と先生に言われて、最初は、ひらがなで画用紙の真ん中に「え」と書いたことがあります。先生から「違うよ、絵だよ」と言われたら、今度は漢字で「絵」と描いたのです。
そんな僕でしたが、ある日母に教えてもらった歌に合わせて絵を描く絵描き歌を幼稚園で披露するとみんなが上手だと褒めてくれました。それで、絵を描くことがどんどん好きになりました。
今でも、執筆の合間の気分転換に動物や植物、昆虫などの絵を描いています。絵の具を塗っている間、僕は色そのものになった気分にひたります。
僕が保育者に望んでいること
――発達障害など、特性のある子に対して、「どう声かけをしたり、どう接したりすればいいかわからない」と悩む人も多いと聞きます。今回、著書の中でもたくさんのお悩みが寄せられました。東田さんは、周囲の大人に「こういうふうに接して欲しかった」という気持ちはありますか?
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