他のみんながするように、並んだり、椅子に座ったり、先生の話を聞いたり、ちゃんとしなければということはわかっていても、できないのです。そのことで、先生や友達に迷惑をかけてしまっていると感じて、辛かったです。

 それに、言いたいことがあっても、僕の口からは言葉がうまく出てきてくれません。

 みんなが当たり前のようにやっていることが、僕にとっては難しいことでした。何をしてもなかなかうまくできず、本当に苦労しました。

「どうして自分だけ、できないのだろう?」と思うと、悲しくてしかたなかったです。

 教室にいられなくなって、飛び出したことが何度もありました。

――逆に支えになったこと、嬉しかったことで覚えていることはありますか?

 僕は、教室を飛び出し砂場に逃げたこともありますが、先生が追いかけてきてくれて、僕の隣で砂をさらさら落とす遊びを一緒にやってくれたり、砂団子を作ってくれたりしました。

 先生は、僕の気持ちに寄り添って、根気強く関わってくれたと思います。

 僕が幼稚園の頃に、一番望んでいたことは、他のみんなと同じようにしたくても、どうしてもできない、そんな気持ちをわかってもらうことだったと思います。

 先生は、クラスの中で話せない僕がひとりぼっちにならないように、「ごめんね」や「ありがとう」だけでなく、僕がどんな気持ちなのかを代弁してくれました。みんなは先生の言葉が、僕の気持ちだと信じていたと思います。

 先生や友達が「頑張ったね」と僕を励ましてくれたり、「どうしたの?」と気にかけたりしてくれて、仲間として見守ってくれたことはありがたかったです。

 自分の味方が増えたような気がして、生きる勇気につながったと思います。

みんなに褒めてもらって絵を描くのが好きになった

――そうした先生やお友達の応援があったことが、毎日幼稚園に通えた理由だったんですね。

 はい。七夕のお遊戯会で、お友達と並んで亀やひよこの役をしたり、園庭で先生に手伝ってもらってボールブランコをしたり、幼稚園でお誕生日会をしてもらったり、運動会では先生が手をつないで一緒にかけっこをしてくれました。

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