岩田先生は「理科の教員にしかわからないとは思うのですが……」と前置きした上で、「渋幕オリジナルの実験もあるんですよ」といいます。机の上に乗って体積測定をする実験や注射器を使った実験などがそれにあたるそう。

「生徒たちが自由に実験をして、自分の力で何かを見つけ出すことを大事にする意識があふれている学校なんです」と岩田先生は嬉しそうに語ります。

「マイ試験管」を持つほどこだわる

 実験の中でも、「自調自考」の精神に則り、「生徒に考えさせる」ことを最も重視しているといいます。

よく教科書に載っている『確認実験』は型にはめて、お決まりの手順で答えを確認していくものが多いです。しかし、これでは真の実験の楽しみが伝わりにくい。安全には細心の注意を払いますが、基本的に自分でチャレンジしながら何かを見いだしていく実験に重きを置いています。だから、一般的には中学校では使用しないような試薬や器具も使います。中学校から実験をどんどん重ねるので、高校3年生にもなると『マイ試験管』を持つような生徒も現れます」

 岩田先生の目から見ると中学生で入学してきた時点では、自然体験やお手伝いの経験などがあまりない子もいるという。だからこそ、机上の空論ではない実際の体験を、理科では大切にしているといいます。

実験をすることは必然的に探究的な学びを行うことになります。受験はあくまで通過点にすぎませんが、大学入試問題も探究的な設問にシフトしてきています。特に理系学科の実験問題は、想像の域で解いていくしかない。そこで大事になるのが、どれだけ実験の場に自分が立ってきた経験があるか、です」

 中学生の頃は準備の仕方などをきちんと伝えていくが、高校生になると先生が用意を周到に行うことはなくなるといいます。生徒が自ら動き準備も片付けもできるようになっていくのです。ここでも、少しずつ手を離す教育が体現されているといえるでしょう。

 実験にはどうしても時間がかかる。そのため、夏休みなどの長期休暇を「実験デイ」にすることもあるといいます。生物の中谷隆一先生は、「高校段階の遺伝子を理解するための分子生物学の実験は一コマでは組めないので、夏休みの4日間、朝から晩まで自分のDNAを調べる実験をします」と話してくれました。

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