「体育が苦手」な生徒が汗だくで頑張れた理由

 もちろん、それでも中には、体育の授業が苦手だという生徒もいます。特に、疲れる長距離走などは、多くの生徒が億劫になるものです。

 そこで、まず長距離走は生涯スポーツの印象に近づけられるように「ランニング」という単元名に更新。ただ、同じ距離のタイムを競うのではなく、例えば、「サイコロを振って出た目の人数でグループになって走る」「学校内を散策しながら、40分間のコースを自分たちでアレンジする」「おしゃべりしながら走る」「校外学習の飯盒炊爨で使える自然の着火剤(薪や松ぼっくり)を集めながら走る」と言ったように、記録への挑戦を自分たちで調整できるようにしたり、記録とは別の目標を生徒自ら立てたりなど、楽しみながらランニングに挑戦できるように、うながしてみました。

 授業中にそんな勝手なことをしてもいいのか、と疑問に思う方もいらっしゃるかもしれません。しかし、学習指導要領の「保健体育」の欄に記載された「生涯にわたって健康を保持増進し、豊かなスポーツライフを実現すること」という目標に則るなら、何もただみんなが同じゴールまでの時間を競い合い、つらくて苦しい時間を耐えるだけものでなくてもいいはずなのです。

「楽しみながら、気がついたら40分間走れていた」「今までの自分より成長した」という実感があってこそ、理想の体育(スポーツ)の授業だと私は思っています。

 そうして、やがて「これが僕のランニングだ」と発見できることができれば、生涯、体を動かすことに親しみを持ち続けることができるでしょう。こうしたことを提案すると、長距離走は大の苦手だと言っていた生徒も、みんなと楽しみながら、汗をかいて最後まで走り切ることができるようになりました。さらに、ランニングを日常に取り入れた生徒もいたのです。

子どもが自分で得る感動に、学びがあると気づいた

 実は、私自身が、教師として生徒に寄り添うことができるようになったきっかけは、わが子の発した言葉にありました。

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