安浪:おそらく、勉強と正面から向き合ってきた経験がないと、その重要性がわからない、というのもあるのかもしれないですよね。そういう人ほどタブレットでいいじゃんとなってしまうような気がするんです。

佐藤:ああ、そうなのかも。まずは紙と鉛筆。それを小学生時代の12歳までちゃんとやることが大事です。

安浪:今はパソコンがあるから漢字は書けなくていいし、書き順とか気にする必要はない、って言う親御さんがいますが、いや、漢字は書けないとダメだよ、って思います。入試で出るからとかじゃなくて。

佐藤:ベースになる知性と教養になるんですよ。その中には「作業力」も入っていると思います。作業とは、鉛筆を持って書くこと。例えば、ごちゃごちゃした算数の文章題を式に直す能力。あれなんかはごちゃごちゃした世の中のことをまとめたり、整理整頓して考える練習にもなるんです。算数だけでなく、一般社会にも役に立つんですよね。

佐藤亮子さん

省エネ・コスパ思想は危ない!

安浪:結局書くことってアウトプットの練習ですよね。タブレットでもアウトプットできる、って声もありますが、計算もタブレットのアプリでやると、なんというか、流れていくんですよね。当たったラッキー、外れた残念、の世界というか。鉛筆をしっかり持って、ノートに書くことで考えがまとまるし見返すこともできる。

佐藤:そしてなんといっても実践力が鍛えられます。勉強も運動も、理論と実践があるじゃないですか。例えば水泳でもどういうふうにすれば水に浮くかとか、筋肉をこう動かせば前に進む、などの理論はありますが、全部学んだところでプールに入れても絶対溺れます。結局、理論だけでは絶対ダメなんですよ。だから理論と実践の割合が大事なんですが、小学校の間は特に実践が大事です。

安浪:本当にそうです。

佐藤:もちろん、理論も必要ですが、理論は実践に落とし込むのが大事なので。つまり、体や手を動かさないと。成長するにつれてだんだん理論も大事になってくるんですが、それでも理論と実践を交互にやることが大事です。実践はタブレットだけじゃダメ。

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