佐藤:そう。それに6年生の秋以降だけ時短勤務にしても、正直もう間に合わないと思うんです。基礎ができていないのに、数ヶ月で挽回できるほど中学受験は甘くない。4年、5年、6年の全体をどう過ごすかをもっと前から計画しておかないと。

安浪京子さん

安浪:親としては「今まであまりサポートできなかったからせめて最後の数ヶ月だけでも何とか……」って気持ちはあるんでしょうね。

佐藤:そもそも、「仕事と子育ての両立」はできないですよ。【両立】って、どっちも完璧にこなすイメージじゃないですか。でも、そんなこと現実には無理。だから私は【同時並行】でやればいいんじゃないかと思っています。

安浪:あ、それすごく共感します。

佐藤:仕事と受験のサポートを「両立しよう」と思うと、ついどちらも完璧にこなさなきゃいけない、と思ってしまいますよね。でも、それは無理に決まっているじゃないですか。私は専業主婦でしたが、子育てと家事の両立は無理で、家の中はいつもぐちゃぐちゃでした。子どもって、片づけても片づけてもすぐ散らかすんです。でも、それは元気な証拠だと思っていました。子どもにかかりきりだった時期は、「今日は片づけはまったくできなかったけど、洗濯はした」とか、「たいした料理は作れなかったけど、一応何かは用意した」とか、心の中で自分なりに折り合いをつけていたんです。どちらも完璧にはできなくて当然。でも、「同時に並行してやっている」と思えたら、気持ちはだいぶ楽になります。

安浪:確かに。“両立しなきゃ”って思うと、できてない自分を責めてしまいますよね。

佐藤:そうなんです。「両立」っていう言葉が、特にお母さんを追い詰めてしまうんです。
仕事も家事も、そして受験のサポートも全部を完璧にできるわけがない。だから、できないものを無理に追い求めるより、「同時並行で、時にはどこかに偏りながらやる」くらいでちょうどいいと思いますよ。

※「中学受験の意義」(佐藤亮子・安浪京子著)から一部編集

東大理三出身・佐藤ママの長女が語る、母の教育「いい大学に行ってくれたら自慢できるという感情は母には全くなかった」
中学受験の意義

佐藤 亮子,安浪 京子

中学受験の意義
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佐藤亮子
佐藤亮子

さとう・りょうこ/4人の子ども全員を東京大学理科三類に合格させた実績を持つ教育・子育てアドバイザー。著書に『佐藤ママの子育てバイブル 学びの黄金ルール42』(朝日新聞出版)、安浪京子さんとの共著『中学受験の意義 私たちはこう考えた』(朝日新聞出版)など。

安浪京子
中学受験専門カウンセラー/算数教育家 安浪京子

やすなみ・きょうこ/「きょうこ先生」として親しまれている中学受験専門カウンセラー、算数教育家。佐藤亮子さんとの共著『親がやるべき受験サポート』(朝日新聞出版)が好評。最新刊は佐藤亮子さんとの共著『中学受験の意義 私たちはこう考えた』(朝日新聞出版)。オンラインサイト「中学受験カフェ」主宰。

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