「描きたかったのは“中学受験”そのものではなく、家族の物語」と腑に落ちた

安浪 世界中ですか!

早見 ええ、ベネズエラとか南アフリカとかに行きたいというような面白い子に育つことを期待して……、でも結局、娘は「東京の学校に行く」という僕にすればがっかりする選択をしました(苦笑)。

安浪 引っ越しが多かったから、東京の女子校生に憧れたのかもしれないですね。

早見 そうかもしれません。それで学校選びのために塾に行き始めたのですが、塾は娘にとって、とても楽しい場所だったようです。

安浪 あ、そこは『問題。』の主人公と同じですね。作品を拝読して、ひとつ気になったことを言ってもいいですか? この主人公のように、自分で勉強のスイッチを入れて、真剣に受験勉強に取り組める小学生は、なかなかいません!(笑)

早見 ええ。批判はあるだろうなという前提で書きました。ただ、僕が描きたかったのは、受験をどう突破するかではなく、受験を通して、人生にはいろんな選択があるということに気づくための物語だったんです。

安浪 私も最後まで読んで、「早見さんが描きたかったのは“中学受験”そのものではなく、家族の物語なのだ」と、腑に落ちました。

志望校に落ちたことで、より豊かな人生を選び、歩めることもある

早見 実際に、自分の娘に関しても、受験に合格するかどうかはどちらでも良くて、ただ、娘には自分で人生を選び取れる人になってほしいという思いの方を強く持っていました。

安浪 ええ、今回の作品の主人公のように、よくよく悩んで考えて、自分で道を選べるのが理想だと私も思います。ただ、中学受験をするご家庭を長年本当にたくさん見てきましたが、実際のところは、親が行かせたいと思う学校に子どもを導くケースがほとんどです。

早見 そうなのですね。でも、僕には、子どもの進路を親が決めて選ぶということの意義が本当にわからなくて……。

安浪 親自身が安心を得たいという気持ちもあると思います。でも、実際は、どんな名門校に入っても、お子さんが幸せな人生を歩めるとは限らないのですけれどね。

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