「誠実な」私学が人気になった歴史的入試

 さて、今改めて振り返ると、2025年入試は、人気不人気が入り交じる、かなり「まだら」な入試だったのではないでしょうか。特に、麻布、開成、武蔵、筑波大学附属駒場、桜蔭、女子学院、雙葉など都内の難関校で昨年の応募者数を超えたケースはなく、逆に足立学園、十文字、日本工業大学駒場など、従来中堅校とされてきた私学が総じて 応募者を増やしています。

 ただし、難関校の人気が下がって、中堅校の人気が上がったという2項対立の構造ではなく、保護者の学校選びが多様化し、成熟したと言えるでしょう。ちなみに、これら人気の出た中堅の私学は、教育プログラム、行事、部活動も充実していて、何よりも先生と生徒の距離が近く、「誠実な教育」を実践している点が共通しています。今年人気の強まったこれら中堅の私学は何か新しいことをいきなり始めて人気が出たわけではなく、ここ20年ほど毎年地道にさまざまな取り組みを行い、進化を続けてきた「誠実さ」があります。

 そういう意味では、2025年入試は保護者サイドの価値観の変容が顕在化した歴史的な入試でもあったと言えるでしょう。

(文/井上修)

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井上修
進学レーダー前編集長/日能研入試情報室室長 井上修

いのうえ・おさむ/1967年生まれ。91年横浜国立大学教育学部心理学専攻卒業。同年日能研入社。以来継続して入試・学校・教育情報を専門とする。中学受験雑誌「進学レーダー」編集長を経て2024年より現職。著書、雑誌への寄稿多数。

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