おすすめポイント

 鬼というと恐ろしいイメージがありますが、このお話では鬼が団地に住んでいたり鬼の子が小学校に通ったりと、私たち人間と変わらない日常を過ごしている様子が描かれています。でも、似ているようでちょっとだけ違うのがおもしろいところです。たとえば、学校に来る前に鉛筆を削ってくることや朝食後の歯磨きと同じくらい大事なのが角を削ってくることだったり、体育ではなくて「かなぼう」の授業があったり。

「おにがしま」での遠足中、サイレンとともに島にやってきたのは鬼退治に来た人間。人間に良い人間と悪い人間がいるように、鬼にも良い鬼と悪い鬼がいる。そんな言葉にハッとさせられます。見分けがつかずに良い鬼まで危険な目に遭うかもしれないと、ベニーとルリーたちは先生に連れられて薄暗い洞穴に隠れますが、さっきまで楽しそうにしていた鬼の子たちが恐怖で涙目になっているのを見ると、心を痛める子もいるのではないでしょうか。「鬼は怖い」「鬼はみんな悪い」そんな先入観や固定観念にとらわれてはいけないのだと、子どもたちにも伝わることでしょう。ラスト、お風呂につかりながらベニーとルリーが頭に浮かべたやさしい言葉にほっこりします。

「鬼」をもじった造語にも注目です。人間が鬼の街まで鬼退治にやってきたことで小学校は「オニラインじゅぎょう」になったり、年に一度の大運動会「オニンピック」が地獄をあげて開かれたり。子供心をくすぐる言葉遊びが出てくるのも楽しいところです。

 さらにカラフルでかわいい挿絵も見どころの一つ。全ページに挿絵があるので、絵本に近い感覚で読み進めることができます。しかも大半がカラーで細かい描き込みもあるので、隅々まで見たくなること間違いなしです。

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