ですから、赤ちゃんの「人見知り」は、お母さんなど特定の人としっかり愛着関係が形成されているあかしだといわれます。そして、愛着関係が築かれていれば、子どもも健全に成長するということが脳の状態でもわかっています。

 しかし近年、この愛着にトラウマを抱える子どもが増えているといわれているのです。

発達障害ではなく「愛着障害」であるケースも

――愛着にトラウマがあるとは、どういうことでしょうか。

 親など、特定の人としっかりと愛着関係が築けていないということです。愛着障害ともいいますが、これにはいくつか原因が考えられます。

 まず、子どもが愛着行動を起こしたときに、親が受け止めないことです。「今忙しい」「今だめ」……これが常になると、子どもは「お母さんには近づいてはいけないんだ」と感じて、愛着形成ができません。

 さらに虐待などの「不適切な養育」です。虐待といっても、そんなつもりでなくても、結果的にそれに通じてしまっているケースも多いのです。たとえば、親がやりたいことを子どもの意思に関係なくやらせる。「あなたはこれからこういう道に進む。そのためにこのくらい勉強をして、あの大学に進学して……」という具合です。子どもが好むか好まないか、なにをやりたいかやりたくないかよりも、世間体や親の価値観を押しつけることも、不適切な養育に入ります。そこにいくら愛情があったとしても、子どもの人格や人権を尊重していません。

 先ほど、脳の発育には愛着関係がしっかり築けていることも大きな条件であるとお話ししました。ですから、一見ADHDのようでも、実は愛着のトラウマが原因にあるというケースもあるのです。その見極めはとても難しいのですが……。

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