小学生のときから1500を超える古墳を訪ね、岡山県の名墳を紹介するガイドブックも出版した、中学2年生の板東郁仁(ばんどう・いくと)さん(岡山県在住)。古墳めぐりを楽しみとし、夢は考古学者で、埴輪(はにわ)にちなんだ愛称は「はにお」。探究心をどう育み、勉強にどう生かしているのか、両親と本人に話を聞きました。

MENU 「構造を見ながら、時代背景など想像が尽きない」 古墳の形状の美しさに心ひかれた 両親は子どもの「好きなこと」を応援 古墳の研究には最新の物理の技術も必要 両親はどんな教育をしている?

「構造を見ながら、時代背景など想像が尽きない」

 枝をかきわけ、クモの巣をはらい、道なき道を進む。

「あった!」

 大きな石が積まれたなかに、人が入れる大きさの空間がある。古墳だった。

「ここは棺(ひつぎ)が置かれていた石室です。石の大きさや積み方で時代がわかります」

 板東郁仁さんが解説してくれた。古代の有力者の墓である古墳には、遺体が収められた棺のほか、鏡や玉、馬具や武器などが埋葬されていたが、多くは後世に持ち去られた。3~7世紀につくられた古墳は、墳丘や石室として形を残し、現在も全国に約16万基ある。

 岡山県の市街地にある郁仁さんの自宅から車で10分ほどの距離にある操山(みさおやま)には130基の古墳が点在する。多くは案内板もないが、「地形や土、石のかたちでわかる」(郁仁さん)。古墳との遭遇は、宝探しをするような高揚感がある。

 歩きながら、郁仁さんは父の哲哉さんと熱心に古墳の構造について話していた。

「最近、郁仁はあまり学校のことを話してくれなくて寂しいのですが、古墳の話題になると家族で盛り上がります」(母の恭子さん)

「古墳に興味を持ったきっかけは形がいろいろあったこと」と郁仁さんは話す。

 歴史の教科書に登場するような大きな前方後円墳のみならず、古墳には円形や四角形、多角形、ホタテ貝形など形状や大きさはさまざまだ。

 文字の史料がないため、誰の墓かわからないが、推測はできる。海が見える場所では「海運に携わった人の古墳と考えられます」と郁仁さんが地域の干拓の歴史を話してくれた。

「構造を見ながら、時代背景などさまざまな想像が尽きないのが古墳の魅力です」

古墳の形状の美しさに心ひかれた

 古墳に興味を持ったのは、小学校4年生のときだ。それまでは城が好きで、両親と城を見学にいったり、「城クイズ」を作って一緒に遊んだりしていた。

「城の構造、建築に興味がありました。神社や寺も同じ理由で好きになりました」

 しかし、コロナ禍は城の閉館が相次いだ。古墳に出合ったのは、そんなとき。家の近くを自転車で走っていて「神宮寺山(じんぐうじやま)古墳」への案内を見つけたのだ。古代の「吉備の国」に位置する岡山県は、3~7世紀にできたとされる古墳がおよそ1万1800基ある「古墳県」だ。神宮寺山古墳は全長150メートル、大型の前方後円墳で、上から見下ろす古墳の形状の美しさに心ひかれた。それから両親と一緒に自転車で古墳めぐりが始まった。1日に60キロ走ったこともある。

次のページへ学校では引かれたことも・・・
1 2 3