鬼よりも怖い。子どもの心を壊す「脅し」とは
そうは言っても、「そんな時間も手間もかけられない!」という場合も多いですよね。ときには「鬼」の手を借りたいこともあるはずです。鬼だけでなく「警察につかまるよ!」とか「パパに叱ってもらおう」とか、自分ではない「何か」に助けてもらいたくなる気持ちはよくわかります。
日頃から愛情を子どもに伝え、丁寧に理由を伝えながら子育てをしていれば、ときに「鬼」がきたところで、子どもの発達に悪影響を及ぼすことはないでしょう。
問題は、それがエスカレートしてしまうことです。
子どもが言うことを聞かなくなると、親は「愛情を断つ」という方法で脅しをかける傾向があります。無視する、言葉をかけない、部屋や押し入れに閉じ込める、「あなたなんていらない」「私の子どもじゃない」と言う……。
親の愛情が断たれることは、子どもにとって最大の危機です。これ以上の恐怖はありません。「地獄の絵本」よりも「鬼の電話」よりも恐ろしいのです。それはやはり、心理的虐待にあたると私は思います。
脅すことよりも、ずっと効果的な言葉かけがある
では、子どもが自ら望ましい行動をとるようにするには、どうすればいいのでしょう。
残念ながら、一朝一夕に解決する魔法はありません。それでも、ぜひやってほしいのが「ほめる」ことです。
子どもの中には、「ほめられたい」「自分はできる子でありたい」という前向きな思いが必ずあります。
たとえば「あなたは朝に強いね。早起きできるのってすごいね!」と親にほめてもらえれば、その子の中に「自分は早起きができる子なんだ」というポジティブな自己像が育っていきます。すると、眠いときでも「寝坊したら恥ずかしい。ちゃんと起きよう」とがんばれるのです。
とはいえ、毎日寝坊する子に「早起きだね」とは言えません。ほめるためには、早く起きられるような環境を親がつくる必要があります。
たとえば起床時間よりも少し前に、子どもの手を握って声をかける。パンが焼けるいいにおいをかがせる。朝食に好物を用意してワクワクした気持ちで起きられるようにする……。
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