自治体独自の経済支援対策、その効果は?
Q:東京都港区の公立中学校では海外修学旅行の費用として1人30万円あまりを区が補填したり、葛飾区では修学旅行や給食の費用を全額区が負担したりするなど、各自治体が独自の経済支援の対策を打ち立てています。
―― アメリカでは、教育に関してはほとんど連邦政府が介入せずに、州や学校区ごとに独自の政策を打ち立てています。そのため住んでいる地域によって恩恵を受ける内容も異なるのが当たり前です。ほかにも同様の国が多いなかで、日本は基本的に文部科学省が教育政策を統括していますから大きな差違はないのですが、やはり自治体によって、プラスαの政策は異なります。
修学旅行や給食費の無償化など、一つひとつが有効な政策かどうかの検証は難しいですが、自治体が創意工夫をしている点は評価できるでしょう。よその自治体が「うちの自治体でも、こんなことができるのではないか」と、気づきにつながれば理想的です。教育界では「競争」という言葉にネガティブな印象を持つ人も多いですが、ほかの良い部分を「まねる」ことも競争のひとつなのです。
Q:教育格差は経済だけでなく、都市と地方でも拡大しています。
―― 都市と地方の教育格差はテクノロジーの活用で狭められると思います。10年ほど前にアメリカの研究者と話したとき、「日本の学生は英語ができないが、中国の学生はどんな田舎でもネイティブ並みに英語ができる」と話していました。その理由は、地方の学生もYouTubeで勉強しているからだそうです。
「GIGAスクール構想」で全国の児童・生徒一人ひとりにICT端末が配布されました。インターネットなどをもっとうまく活用すれば、学びの可能性が広がります。使いこなせていない学校も多いようですが、子どもの利用の自由度を高めたり、学校同士で良い事例を共有し合ったりするなど、積極的に活用してほしいと思います。
最大の課題「教員不足」には、「柔軟な採用」で対応
Q:今、教育界で一番問題になっていることは何だと考えますか。
―― 直近でいうと、やはり教員不足だと思います。政府で教員を増やすための政策を議論しているようですが、解消にはいたっていません。特に小学校教員の募集倍率の落ち込みが激しく、多くの地域で2倍を下回っています。そうなると教員の質の低下を招き、学校教育全体に悪影響を及ぼしそうです。
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