「クラスのみんなと仲よさそうにしている」「親の言うことをよく聞き、塾や習い事もがんばって取り組んでいる」――。親から見たら手がかからない「いい子」。しかし一生懸命に空気を読みすぎて、心が疲れてしまっている子どももいます。『空気を読みすぎる子どもたち』などの著書がある小児精神科医の古荘純一さんによると、古荘さんの外来を受診する子どものなかには、周りに適応しすぎて疲れているケースが目立つと言います。これはどういうことなのでしょうか? 古荘先生にくわしく聞きました。※<後編>周りに合わせすぎてストレスを抱える子どもの「過剰適応」 10歳までに心がけたい、5つの対処法とは【医師が解説】に続く
【表】うちの子、もしかしたら「過剰適応」かも? チェックリストはこちら空気を読みすぎる「過剰適応」とは
友だちと仲よくしていて、勉強や習い事もがんばっている――。親から見ると何も問題もなく、うまくやれているいい子。でも実は空気を読みすぎ、周りに適応しすぎようとして、必死でがんばっているケースもあります。もちろん、子どもでもある程度周りに合わせたり、状況を見て行動したりすることは必要ですし、がんばって適応しようとするのは自然なことです。
しかし、過剰に空気を読みすぎて自分の気持ちを抑える状態が続くと、心が休まらずストレスを抱えるようになります。私はそんな状態を「過剰適応」と呼んでいます。
園や学校、家庭で――子どもたちはこんなふうに適応し続けている
保育園・幼稚園や小学校で「過剰適応」している子によくあるケースを見てみましょう。
もともと活発で積極的に発言できる子どもでも、クラスに気の合う友だちがいなかったり、少しでもほかの人と違うところがあったりすると、集団で「浮く」「目立つ」のを恐れます。そして周囲の話題に無理に合わせたり、おもしろくないのに笑ったりするようになります。わざとひょうきんな子を演じることもあるでしょう。自分の意見など聞いてもらえないだろうと思い、やがて言いたいことが言えなくなることもあります。
適応しすぎる子どもは、家でも空気を読み続けています。帰宅後は、親の表情や言葉の調子をうかがい、親の態度によって自分の言動を変えるなど涙ぐましい努力をしています。親が不機嫌そうなら宿題を早くすませるなど、親が喜びそうなことをしてみせます。イライラしていたら、近づかないように息をひそめ、機嫌がよくなるとホッとひと安心します。
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