――疲れている自覚は全くなかったんですか?

 なかったですね。やれると思っていました。それなのに急に学校に行けなくなって、自分でも戸惑ったというか、「なんで俺がこんな立場に」って不思議な部分もあった。

「子育てが下手でごめんね」と母

――不登校になった当初、ご両親はどんな様子でしたか?

「何で学校行けへんの?」って小言を言われていました。でもずっと優秀な子としてやってきた訳ですよ。近所の人たちから「順くん(山田さんの本名は順三)、すごいね」とかほめられて、親としていい思いをしてきたのだから、少しくらい学校に行けなくても見守ってくれればいいのに、と思っていました。引きこもりになって数年経ってからは、「働かざる者食うべからず」という感じで、責められることも珍しくなかったですね。

――今はご両親に対してどう思いますか?

 僕の側から言うのもおかしな話ですが、親の人生を振り回してしまった部分があるなと、申し訳ない気持ちもあります。ここ何十年かは、仲が悪いわけではないですけど、ほとんど連絡はとっていない。でも数年前にたまたま母親と電話で話したときに「子育てが下手でごめんね」って言われて。そのときは「そんなことない」って、培ったお笑い芸人の技術を使って全力でフォローしました(笑)。

――お母さまはずっと、自分を責めていたのかもしれないですね。

 だと思いますね。悔いはあるんでしょうね。僕もありますけど。

親には親の人生がある

――山田さんは誰でも不登校になる可能性があることを身をもって体験されているからこそ、ご自身のお子さんたち(12歳と5歳の娘さん)のことが心配になることはないですか?

 世間的にはまだまだ、不登校とか引きこもりを、非常にトリッキーな状態と捉えている向きも少なくないですが、人生のすごろくを考えると、誰しもとまりうるマス目だと思っています。なので娘たちのことが心配になることもありますけど、今は僕が不登校になっていたときよりも、フリースクールとか選択肢が増えているし、行政もさまざまな取り組みをしていますよね。

次のページへ今も圧倒的主流は、登校すること
1 2 3 4 5