毎日の生活がルーチン化されるなかで、思考を止めないためには「目的って何だろう?という意識を持つことが重要」と教育評論家の石田勝紀さんはいいます。子どもだけではなく、親自身も自分に問いかけたい目的意識力とは? 著書『同じ勉強をしていて、なぜ差がつくのか?』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)から紹介します。

「目的意識力」をつくるマジックワード 「何のため?」

 世の中、目的もなく行動している人が少なくありません。もちろん、毎日毎日、目的を意識して生活していると疲れてしまうので、それはそれで悪くはないでしょう。しかし、それが習い性となると、目的を持たなくてはならないときに、考えられなくなるおそれがあります。すると、誰かがつくった目的にただ従うだけになり、従属的な生き方をしなくてはならなくなるでしょう。

 目的を意識できないことで一番怖いのは、「思考が停止する」ことです。つまり、OS(=地頭)のスペックが上がらないままでいるということです。ですから、逆に言えば「何のためなのか?」という意識を持つようになると、思考が始まり、OSのスペックが上がっていくということなのです。

 では、「目的意識」が出てくるとどうなるか、具体的に見てみましょう。

 人間には目的意識というものが元来備わっているので、目的がわかると、その“目的地”に到達するために、途端に頭脳が動き出し、方法を考え出そうとします。

 たとえば、旅行に行くとしましょう。「旅行は何のために行くの?」と聞かれて、「世界遺産を見るために行く」「これまでしたことのないパラセーリングをしに行く」「感動体験を味わうために行く」「現地の人々と交流して、文化の違いを知るために行く」など、目的はさまざまだと思います。

 しかし、このように目的が最初からあって旅行を企画する人もいますが、旅行会社が組んだツアーに参加するだけという場合もあります。

 ツアーでも何か目的はあるでしょうが、参加者はどうしても決められたことに従わざるを得ないため、ツアーに参加しても最後までノルマをこなすだけになりかねません。これは事実上、「目的」ではないので、頭脳は動きません。旅行中に拾える情報量も少ないことでしょう。みなさんにも、そんなご経験はないでしょうか?

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石田勝紀
石田勝紀

教育評論家。教育デザインラボ代表理事。2016年からカフェスタイルの勉強会「Mama Cafe」を展開。全国で年間130回以上、累計1.3万人以上のママたちが参加。近著 『子どもを育てる7つの原則』(大和書房)、『のびる子はやっている最大効果を出す〜小学生の勉強法』(新興出版社)ほか著書多数。

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