学校も手をこまねいているわけではありません。「本をたくさん借りた人を表彰する」「朝の読書時間を設ける」といった取り組みも進んでいます。それなりの効果はあるものの、蓋を開けてみると「大量に借りて読まないで返却する」「短い文章の本しか読まない」という子どもも続出する始末。子どもの発想はおもしろいですが、教育現場もどうしたらいいのか頭を抱えているのです。

 学研教育総合研究所が2023年に実施した小学生とその保護者、計1200組を対象とした調査(学研教育総合研究所・小学生白書Web 版〈2023年10月調査〉『小学生の日常生活・学習に関する調査』) によると、小学生の読書量(電子書籍· まんが除く)の月平均は月4.0冊。親世代が小学生だった頃と比較すると、半分以下の冊数です。月に1冊も本を読まない子どもの割合は3割を超えました。また、男子の方が読まない傾向にあることが明らかになっています。

 こうした現代の小学生では、ぽんと読書感想文の課題が出されても太刀打ちできません。いかにハードルが高いか、お分かりいただけるかと思います。特にあらかじめ本が定まっている「課題図書」は読書が苦手な子にとってはハイレベル過ぎることも。学校現場からも「ますます読書嫌いを増やしてしまうのでは」と危惧する声が上がっています。

 加えて作文力の問題もあります。昔のように作文や日記といった「長文を書く訓練」の機会が減っている子どもたち。書きたくなければ生成AIに頼ることだってできる時代です。文章力に自信がない子どもたちにとって、いくらでも抜け道はあります。

 ところがです。これからの世の中は読書感想文や日記、自由研究に対して自主的かつ意欲的に取り組める子どもこそがトップランナーになる仕組みになっているのです。2021年度より大学入学共通テストが導入され、英語や数学にも読解力、表現力といった「国語力」が一層求められるようになりました。こうした力は一朝一夕に養えるものではありません。子どもの頃から本に親しみ、読書感想文や絵日記、作文を通して、文章で自分の考えをまとめる習慣が必要になってきます。

 全然本を読まないのに……と親としてはもどかしいところですが、「子ども時代にいかにたくさんの経験が積めるか」がカギとなっています。家庭での読み聞かせや日記、新聞や図鑑を利用した調べ学習を習慣にするのもおすすめです。

知っておきたい超スマート社会を生き抜くための教育トレンド: 親と子のギャップをうめる

宮本さおり,大楽眞衣子

知っておきたい超スマート社会を生き抜くための教育トレンド: 親と子のギャップをうめる
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大楽眞衣子
大楽眞衣子

ライター。全国紙記者を経てフリーランスに。地方で男子3人を育てながら培った保護者目線で、子育て、教育、女性の生き方をテーマに『AERA』など複数の媒体で執筆。共著に『知っておきたい超スマート社会を生き抜くための教育トレンド 親と子のギャップをうめる』(笠間書院、宮本さおり編著)がある。静岡県在住。

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