かつて日本が起こしたアジア·太平洋戦争(※1)を見てみましょう。当時の日本は、アジア諸国を植民地化して自国を豊かにするという「利益」の目的が大きくありました。また、明治以降にいち早く近代化の波に乗った日本は、「アジアの一等国」だと威張っていたので、「名誉」のためもあったのでしょう。

 さらにアメリカに奇襲攻撃をしかけますが、その背景には、「戦争が長期化すれば、アメリカには絶対かなわない。だから、やるなら今しかない!」という「恐怖」の気持ちも大きくあったのです。

ロシア・ウクライナ戦争(2022年2月24日~現在)の場合

 ロシアのプーチン大統領は、戦争前から「ウクライナはロシアの一部」だと言い続けています。旧ソ連の崩壊で別々の国になってしまったウクライナを取り戻すという「名誉」に、プーチンは突き動かされているといえます。

 また、今後、ウクライナが北大西洋条約機構(NATO/※2)に加盟してアメリカの基地を国内に設置し、ロシアを脅かす存在になるかもしれない。それはプーチンにとって「恐怖」なのです。実際、戦争直前にアメリカとNATOに対して、「これ以上、旧ソ連の国にNATOを拡大しない、軍事演習もしないことを約束しろ」という文書を送り付けています。

 一方、ウクライナの領土を手に入れることで得られる「利益」は、ロシアにとってはそれほど大きくはないように思います。

小泉悠さんから子どもたちへメッセージ「みなさんが生きている間に、戦争を完全になくすことはむずかしいかもしれない。でも、なくすための努力はしていきたいね」(写真:横関一浩)

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ジュニアエラ編集部
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