第二次世界大戦の終結から今年で79年を迎えますが、世界の各地では戦争や紛争などが絶えません。小中学生向けのニュース誌「ジュニアエラ」(朝日新聞出版)が小学生200人におこなった「戦争に関するアンケート」によると、約9割の子どもたちが「日々、テレビやインターネットで「戦争」に関するニュースを見る」と回答。特に多かったのが「なぜ戦争は起きるの?」という質問でした。人間はなぜ戦争を起こしてしまうのでしょうか? 誰の心にもある「3つの理由」について、軍事・安全保障にくわしい小泉悠さんが教えてくれました。「ジュニアエラ2024年7月号」からお届けします。
【図】人間が戦争をする3つの理由とは?(全3枚)戦争は人間らしさの「バグ」で起こる
私は、戦争は人間性の「バグ」(パソコン用語ではコンピュータープログラムの不具合や誤りのこと)だと思います。人間らしい感情を持っているからこそ、戦争が起きてしまう可能性があるのです。
人間は優しい気持ちを持っていて、人をいたわったり理解したり、家族や友達が傷ついたら悲しいという感情も持っていますよね。一方で、相手が自分の言うことを聞かないと、相手につらい思いをさせれば聞くだろうという“計算”もできてしまう。
話し合う、お金の力を利用するなど、いろいろ試してもダメだったとき、最後にはやはり、暴力という手段が効いてしまう。相手の体を傷つけたり、命を奪ったりする戦争というのはその究極です。
「利益・名誉・恐怖」が戦争の引き金になる
では、どういうときに人は暴力までふるってしまうのでしょうか。アテネの歴史家·トゥキュディデスは今から2千年以上前に『歴史』という戦史を残しています。その中で、人間が戦争をする理由は「利益」「名誉」「恐怖」であると言っています。
「利益」は外国の土地などを奪って、金もうけをしようということ。植民地を獲得するための戦争はこれにあたるでしょう。「名誉」はお金には換算できない価値、名声を得ようとすること。「恐怖」というのは、相手にやられてしまう前に、先にやっつけようということです。この三つのどれか、あるいは複数が混ざり合って、戦争が起きるというのです。