視線が落ちるので、どうしても頭が下を向いてしまいます。頭の重さに引っ張られて背骨はC字カーブを描かざるをえなくなるのです。小さな端末を操作することで胸は閉じ、肩も前側に巻いてきます。猫背の完成ですね。タブレットやスマホの使い過ぎでも同じことがおきます。

 座っているときの環境も原因と考えられます。座面が柔らかいタイプのソファはゆったりできますが、よい姿勢を保つという観点ではおすすめできません。柔らかいソファに座るとどうしても骨盤が後ろに傾いて腰が丸くなるので、やはり背骨がC字になる。骨盤が後ろに傾く状態だと腹筋が緩んでしまうことで、しっかりと活動しなくなることが懸念されます。ソファは筋肉を使わずにすむからリラックスできるわけです。ソファにあぐらをかいて座ってゲームをする子どもの姿はよくある光景ですが、姿勢という意味では最もよくないですね。

 また、重たいランドセルも原因のひとつといえるでしょう。重たいランドセルを背負うと、重心が背中側に引っ張られますが、それを戻すために一番簡単なのは頭の重みを利用すること。つまり、頭を前に出してバランスを取ろうとしてしまうんです。すると首や肩の筋肉も緊張するので肩こりや頭痛の原因にもなります。姿勢をよくするという観点では、おなか側に背負うほうがまだいいですね。

姿勢が悪いと心肺機能にも影響が…

――姿勢が悪いと、どんな影響があるのでしょう?

 そもそもなぜ背骨はS字カーブを描いているのかを考えてみてください。赤ちゃんのとき、人間の背骨はみんなC字カーブです。立って動くようになると、背骨はS字カーブを描くようになるのです。それは、頭の重さを分散するためです。そのための絶妙なカーブなわけなので、曲がりすぎても、まっすぐすぎてもいけません。背骨はいわば身体の大黒柱。S字カーブが崩れてしまうとあちこちに影響が出てきます。

 身体的に大きいのは、心肺機能への影響です。猫背の場合、背中の上のほうが丸まりますね。すると、そのあたりにある心臓や肺は常に圧迫された状態になります。息を吸うとき胸は広がり、吐くときは狭まるというのが生理的現象ですが、猫背になると、息を吐いたときの状態でロックされているのと同じ状態になります。成長期にこの状態での生活が続くと、心肺機能がどうしても育ちにくくなるといえるでしょう。

NEXT姿勢が及ぼす影響は病気だけではない
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