釈さんはゆるやかに「おうち英語」をスタートした。基本は英語の音をかけ流しするだけ。子ども番組を見せるかわりに、英語のコンテンツに触れさせた。インプットのみだが、英語が楽しいと思えればそれでいい、と考えた。
「聞かせるだけだったんですが、画面に向かって英語をまねするようになって、その発音がすごくよかったんです。それもあって年少さんのとき、海外の撮影に息子を同行させたところ、本人が『もっと英語を話したい』って」
帰国後、インターナショナル幼稚園を見学した。息子は目を輝かせて「ここがいい!」と言った。
「園ではすべて英語です。フォニックスの指導もあるので、自然と英語の文字も読めるようになりました」
家庭では母語での思考力を育てる
息子は6歳で英検3級、7歳で準2級に合格した。だが釈さんは「英検はあくまで英語力の目安。そのために勉強させるのは違う」と考えた。
家庭ですべきことは何だろう。それは「母語での思考力を育てること」だった。
「絵本は家に千冊以上あって、幼児期から1日10冊は読み聞かせしています。英語の本は息子が一人で読むので、私はネットを通じて読みやすいリーディングブックを探しています。最近は『マジック・ツリーハウス』シリーズがお気に入りみたいです。読書量が増えたら、自然にライティングもできるようになりました」
育てたかった自主性も、順調に育まれているようだ。
「最近、夏休みは日本人のいないサマーキャンプに参加したいって、自主的に調べています。『英語で検索するほうがいいよ』とアドバイスしたら、かなりローカルなキャンプを見つけてきました(笑)」
コロナ明け、釈さん親子はオーストラリアを旅行した。現地の公園で、息子は地元の子とすぐに仲良くなり、お互いの言葉を教え合っていた。
「ああ、私が育てたかった英語力ってこれだったんだ!と改めて思いました。世界のどこでも友だちを作れる、これこそが英語を学ぶ目的です」
(文/神 素子)
朝日新聞出版