写真家を目指し、若いころから大自然の中で過ごすことが多かったという登山地図GPSアプリ「YAMAP」の開発者、春山慶彦さん。自然のなかで過ごすとおのずと生きることに向き合い、動物として生き延びる感覚が養われるといいます。身体や感覚を存分に使って遊ぶ、楽しむ。そうした自然体験は何をもたらしてくれるのかを教えてもらいました。
【写真】自然体験といえばこの人!無人島脱出や、山や海を元気にかけ回るタレントとは?自然が教えてくれる、生き延びるための知恵
電波の届かない山の中でもスマートフォンで現在地や最新の登山情報がわかるGPSアプリ「YAMAP」を開発した春山慶彦さん。仕事柄、山などの自然で過ごすことが多く、「歩くことの大切さ」を感じているといいます。
「山できつい坂を上っていくと、上から見おろす景色は下から見ていた景色と全然違う。頂上に立てば『ここまで登ったんだ』という達成感や感動も合わさってさらに違って見えるから不思議です」
このような「同じ世界にいくつもの見え方があることを経験できるのが歩くことの醍醐味」と話す春山さん。一つの事象に対していろいろな視点を持てれば物事を見る目も多様になり、人生の壁にぶつかったときに「ここがダメなら別の世界に行けばいいと思う原動力になる」と話します。
また、大自然の中に身を置いて、「人間は自然に太刀打ちできない弱い存在だと気づくことも大切な経験ですね」と春山さん。
「日本は地震や集中豪雨などが多く、自然災害を目の当たりにしていますよね。自然の脅威のなかで人間があっけなく死んでしまうこともあれば、生きていることを奇跡と思える瞬間もある。登山でも無事下山できるまでは生死の境目にいるような感覚。山へ行くほど自然に対する謙虚さや命のありがたさが身体や心に広がります」
山の中に入ると「自然への畏(おそ)れや生きることに向き合う緊張感がある」と春山さん。子どもたちを山に引率する際も「自然とお互いに協力する姿が見られる」といいます。
「山ですれ違うときにあいさつを交わすのは、遭難したときにお互いに覚えておくために気を交わすという意味合いもあります。お互いに助け合おうとする協力のスイッチが入るのも、生き延びるために自然の中で備わった知恵を身体が思い出すからなのかなと」
次のページへ自然の中で親子に話してほしいことは?