4科目の偏差値が少しでも上がることを重視するから、「いまは(受験科目外の)英語に取り組んでいる場合ではない」といった発想になってしまう。「大切なわが子の入試だ、これで人生が決まるかもしれない」と自分を追い詰めてしまう保護者の方だと難しいだろうなと思います。

茂山 最近は、「受験勉強のために、すべての時間を費やさなければ受からない」という空気が強すぎる気がしますね。例えば小学5、6年の時期に週1回、英会話教室に行くのだって「受験勉強と両立している」と言えると思うわけです。それは、英語に限らず音楽やスポーツも同じ。ひたすら上を目指そうとすると、「隙間の時間を作らず、すべての時間を4科目に費やさなければ不安」という考えに至るのは理解できますが、「ここの学校もいいな」「あの学校も楽しそうだな」と偏差値にとらわれず広く選択肢を持っていれば、英語をはじめとする習い事だって並行してできる。

 中学受験のための勉強は、言ってしまえば「中学に入るための勉強」にすぎません。その先につながるような学びや経験は、ないよりはあったほうが、はるかにいいと思います。

迫田 100パーセント同意します。社会人になると、周囲がみな有名な私立の中高一貫校を卒業しているかといえば、そんなことはありませんよね。地方の学校や公立の学校で学んできた人々の集合体で、社会は成り立っている。

 そう考えると、偏差値にとらわれることにどれだけの意味があるのだろう、とは思いますね。それよりは、習いごとを細々と続けたり、小学生最後の夏休みに少しだけ家族旅行に行ったり、“違う経験”を積んだほうが価値や発見はあるだろうな、と。

茂山 それに、中学に入ると親子で過ごせる時間って一気に減ってしまうんですよね。子どもは、友達や部活の仲間との時間を優先するようになりますから。家族で旅に出て、行った先で時間を決めて集中して勉強をするのだっていい。英語に限らず、塾で勉強をしているだけでは得られない経験ってきっとある。小学生と中学生の子どもを持つ親としても、塾講師としても、そこは強調しておきたいな、と思います。

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