どうして私の母は母親になったんだろう?

 この悩みに向き合うため、改めて自分がこれまでに書いてきたマンガを読み返しました。そして親になることを選んだ毒親育ちの方々のさまざまなパターンの体験談をネットで読んでみたんです。母にも目を向け、「なんで私の母親は親になることを選んだんだろう」と考え、ノートに書き出して整理してみました。というのも、母自身も祖父の体罰や暴言を受けながら育った毒親育ちでした。母自身を分析することで、母を反面教師にしようと心に誓い、「母のようにならないためにはどうしたらいいか」を考えました。そうやって親になりたい気持ちが少しずつ前に進んでいったという感じです。

――コロナ禍の出産で大変だったと思います。一人で抱えて育児がつらくなってしまった時期もあったようですね。

 コロナ禍であまり人と会って話せなかったので、最初の頃はストレスが溜まっていました。もともと人にお願いしたり相談したりすることが苦手だったんです。授乳もなかなかうまくいかず乳腺炎を繰り返し、夜泣きも多くて寝不足が続いているのに一人で抱え、産後うつのような状態になっていきました。何もしていないのに涙が出たり、朝が来るたびに暗い気持ちになったり、何もかもがいやになったりもしました。私が限界に達した時、夫が気づいてくれて。それを機に夫や義両親を頼るようになり、ラクになっていきました。夫が積極的に育児に参加してくれて、労いの言葉をかけてくれることがうれしかったです。

――今は年中の息子さんの子育てに奮闘中だそうですが、毒親に育てられたがゆえに苦労した場面はありましたか。

 母親を反面教師にするあまり、最初の頃は子どもを叱ることが苦手でした。例えばイヤイヤ期に何でもイヤと子どもから言われると、どうしたらいいか分からなくなってしまっていたんです。スーパーの床でねそべって暴れた時も「どこまで言っていいんだろう」「これを言ったら子どものトラウマになってしまうんじゃないかな」とすごく悩んでしまい、呆然として叱れないこともありました。でも何度も繰り返すうちに、適切な言葉選びができるようになりました。

次のページへ子ども時代をやり直している感覚
1 2 3