2歳までにほぼ100%の子どもがかかるというのが、呼吸器の病気「RSウイルス感染症」。日本だけでなく世界中に分布し、風邪のような症状ですが、肺炎など重症になることも。大人も感染し、とくに高齢者や基礎疾患のある人は注意が必要です。ここ数年の間に大流行がありましたが、そんな病気に画期的な予防薬が続々登場しています。「ふらいと先生」こと、小児科医・新生児科医の今西洋介医師に最新の動向を聞きました。

MENU 初めてのRSウイルス感染は重症化しやすい 1回で5カ月も効果が持続 入院を9割抑制する報告も 感染症を8割抑える、妊娠中に接種する予防薬

初めてのRSウイルス感染は重症化しやすい

 RSウイルス(RSV:Respiratory Syncytial Virus)は、子どもに特に深刻な呼吸器感染症を引き起こすウイルスです。

 RSウイルス感染症は乳児や幼児に重篤な下気道疾患、例えば細気管支炎や肺炎を引き起こしやすく、場合によっては入院が必要となることもあります。特に、早産児や基礎疾患を持つ子どもにとっては、そのリスクがいっそう高まります。

 乳児期前半でRSウイルスに感染するケースで多いのは、主に家族内感染です。実際の医療現場では、鼻水(鼻汁)や鼻づまり(鼻閉)に伴い母乳やミルクが飲めなくなるなどの症状での受診も非常に多くあります。

 RSウイルス感染症の恐ろしさは、その頻度と重症度にあります。

 多くの乳幼児が2歳までに一度はRSウイルスに感染すると言われており、特に生後初めてのRSウイルス感染は重症化しやすいのです。高熱や激しいせき、呼吸困難などの症状が表れ、適切な治療を受けないと、命に関わる場合もあります。ウイルス感染症のため抗生物質は効きませんし、対症療法で様子を見ることになりますが、一部の乳幼児では気管挿管をしたうえで人工呼吸管理が必要になることもあり、油断できません。

1回で5カ月も効果が持続 入院を9割抑制する報告も

 これまでRSウイルスの予防には「シナジス」(一般名パリビズマブ)という抗体が投与されてきました。シナジスは、RSウイルスの流行期に月1回、体重1kgあたり15mgを筋肉内注射することで、重篤なRSウイルス感染症のリスクを低減する効果があります 。しかし、シナジスは早産児や心疾患、肺疾患、免疫不全などを持つ子どものみが適応とされてきました。

次のページへRSウイルスに対する新しい予防戦略が登場
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今西洋介(ふらいと先生)
小児科医・新生児科医 今西洋介(ふらいと先生)

小児科医・新生児科医。日本小児科学会専門医/日本周産期・新生児医学会新生児専門医。一般社団法人チャイルドリテラシー協会代表理事。小児公衆衛生学者。医療漫画『コウノドリ』取材協力。富山大学医学部卒業後、都市部と地方の両方のNICU(新生児集中治療室)で新生児医療に従事。Xアカウント(@doctor_nw)は2024年3月現在14万フォロワー。

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