「何でも」「すぐ」「早く」届くを支えている物流が、今「2024年問題」という大きな危機に直面しています。この問題を解決し、すべての荷物がスムーズに運ばれ、トラック運転手も快適に働けるようになるためにはどうすればいいのでしょうか? 物流課題の研究に取り組む立教大学経済学部教授の首藤若菜さんに聞いてみました。小中学生向けのニュース誌「ジュニアエラ3月号」(朝日新聞出版)よりお届けします。
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――そもそも物流2024年問題ってなんですか?
物流2024年問題とは、この4月からトラック運転手の労働時間が規制され、運びきれない荷物が大量に発生するという問題です。政府は、2030年には、荷物の約3分の1が運べなくなると予測しています。トラックは1970年代以降、日本の物流の主役となり、現在、国内貨物輸送量の約9割を占めています。しかし、トラック運転手の賃金水準は低く、長時間の残業が当たり前で、高齢化が進み、人手が不足しているのです。
労働環境の改善もまだまだ不十分
――労働時間の規制は今後も続くのですか?
そもそも今回の規制は、トラック運転手だけが対象ではありません。5年前の2019年4月から「働き方改革」を目指して法律が改正され、全業種の時間外労働の上限が年360時間と改められました。特別な事情があって労働者と会社が合意した場合に限り、年720時間まで認められることになったのです。
しかし、トラックをはじめとする自動車運転手は建設業や医師などとともに長時間労働が深刻ですぐの対応が難しいため、実施が5年先延ばしされました。しかも、とりあえず年960時間という、ほかの業種の特別基準よりさらに多い基準を設け、今後、少しずつ減らしていくことになっています。つまり、今回の規制だけでは、トラック運転手の労働環境の改善も不十分なのです。
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