技術開発だけでは問題は解決できない

――物流2024年問題は、どうすれば解決できるのですか?

 2023年6月に、政府が、「物流革新に向けた政策パッケージ」を発表しました。そこには、効率よく荷物を運ぶためのさまざまな方法が示されています。自動運転技術を使い、1台のトラックの後ろに無人のトラックを2台続けて走らせる「自動隊列走行」の技術開発も進められています。でも、新しい技術だけでは問題は解決できません。例えば、荷物を積みおろす荷役にかかる時間を減らすために、パレット(大量の荷物を載せる台)が半世紀以上前に開発されましたが、今でも、パレットを使って運べるはずの荷物の約5分の1が、パレットを使わずに積みおろしされているのです。

――それはなぜですか?

 パレットを使うと、積める荷物がパレットの分だけ減ったり、運送費が高くなったりするから、荷主(送り主)が運送会社に、パレットを使わないように求めることが多いんです。今、物流業界は競争が激しいため、そう言われると従わざるを得ないんです。荷主と運送会社が話し合って解決しなければならない問題は、ほかにもたくさんあります。労働時間が減ってもトラック運転手が生活に困らないためには、賃金アップが欠かせません。でも、そのために運送費をアップしたくても、荷主が認めてくれないんです。

「送料無料」で運転手の負担が増大

――運送会社の弱みにつけこんでいるような感じがしちゃいます。

 でも、そんなふうに感じる私たちも、知らずしらずのうちに、トラック運転手の人たちの負担を増やしているかもしれないんです。例えば、すぐに必要ではない物をネットで注文するときも、送料無料だと思うと、つい、最短で届く翌日配送で頼んでしまいがちですよね。それを運ぶ人は、2日後ならゆとりをもって運べるのに、1日で届けるとなると、一人で夜通し、寝ずにトラックを走らせなくてはならなくなる。ほかにも、まとめて頼めば1回送ってもらうだけですむのに、送料無料だと思うと、つい、別々に注文してしまいがち。そうすると、当然、運転手の仕事量は倍になってしまいます。

――確かにその通りですね。

 江戸時代の飛脚の料金は、普通の便より早く荷物を届けると、高くなっていました。走って運ぶのは歩くよりもたいへんだから、特別料金になって当然ですよね。現代の翌日配送だって、本来なら特別料金をもらっていいサービスですが、「送料無料」だと、そんな当たり前のことが見えなくなってしまうんです。

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