成田 将来に対する見通しがまったく立たないままモヤモヤと生きていた。でもこれからは親に頼らず自分で考えて自分の人生を生きていかねばと気持ちを切り替えました。

高濱 14歳前後といえば昔は元服のころで思春期でもある。親から離れ始める時期なんですよ。自分のことは自分で悩んで決めないと。成田さんの場合、半強制的ではあるけれど、ある意味いいタイミングだったかもしれませんね。

成田 それに、みんなが想像するほど不幸でもありませんでした。家事を覚えられると思ったし、貧乏も「一日千円の予算でいかにおいしくて栄養のある料理をつくるか」を課題に掲げて戦略を立てながらゲーム感覚で楽しめた。家庭科の授業でミートソースを作ったとき、僕のみじん切りのすごさに、みんなから「おまえ何者?」とどよめきが起こるほどでした。あれはいい成功体験でしたね。

失敗を恐れずまず動く 自分の人生は自分で切り開く それが「起業家精神」

高濱 そんな毎日が、成田さんの提唱する「起業家精神」を育てたのかな。

成田 下地はそうですが、起業という発想をくれたのは四つ上の兄です。

高濱 経済学者で起業家の成田悠輔さん。

成田 はい、丸四角眼鏡がトレードマークのあの人です(笑)。兄は僕にとって「自分の知らないことをたくさん知っている人」でした。だから兄に、どんな本を読めばいいか相談したんです。

高濱 教えてくれたのが36冊の本のリスト。難解本だらけの中に、矢沢永吉の『成りあがり』が入ってるのがいい。

成田 この一冊を加えたことを、兄も自分でシビレてましたよ(笑)。図書館で借りてすべて読んでみましたが、正直わからないものも多かった。だけど自分の視野がものすごく広がりました。それからは本当にたくさんの本を読みましたね。

高濱 学校、部活、家事、介護。プラス読書。不幸を感じるヒマがない。

成田 自分から動けば社会には学ぶ場所がたくさんあると実感しました。高校を卒業するころからビジネスの世界に興味を持つようになって、複数の大学が参加する起業サークルに入ったんです。

次のページへ実社会との出合いが第一歩
1 2 3