結局、Tちゃんは第1志望校には合格することはできませんでしたが、ほかの学校から合格をもらうことができ、新しい学校生活に向けて、すっきりと気持ちを切り替えたようでした。案外、親のほうが第1志望校への未練を断ち切れず、モヤモヤするような気持ちを抱えていたと言います。それでも「今、娘に笑顔があるのは、“合格”できたから。おさえの学校を受けて、やっぱり良かったんだ」と自分に言い聞かせて折り合いをつけていきました。

 全ての受験を終えた2月4日、塾にお礼を伝えに行ったところ、職員室のすみの面談スペースでうつむくY君と母親が、神妙な面持ちの先生と3人で話している様子が見えました。Y君は、お迎えの時にいつも「こんばんは〜!」と気持ちいいあいさつをしてくれる元気な男の子で、明るくて目立つ存在だったので、その面談の雰囲気から、あまりいい状況ではないことが、すぐにわかりました。

うつむいていたY君に笑顔が戻った理由とは…

 そして、2月が終わるころ、その塾では、祝勝を兼ねたお疲れさま会を開くのが恒例でした。Tちゃんのクラスは男女とも仲良しで、試験が終わった解放感も手伝い、そのパーティーでは存分にはしゃぎ、楽しんだようでした。

 夜遅くなったのでTちゃんのお母さんがお迎えに向かうと、例のY君の姿も見えました。この間は暗い顔をしていたけれど、「2月4日以降の受験校で合格をもらえて、パーティーにも参加できてよかったな」と思ったそうです。その帰り道、「Y君も合格したんだね、よかったね」とTちゃんに言うと「いや、全部ダメだったらしい」との返事が。「え! そうだったの!?」と思わず驚くと、「でも、みんなの合格の報告に『すげーじゃん!』とか『よかったな!』と声をかけてたよ」と言うのです。

 驚きながらも、「Y君、落ちちゃったのに、ちゃんとパーティーにも来たんだ。えらいねー」と言うと、「一緒に頑張った仲間だから、『あの学校に入ったからすごい』とか、『落ちたからダメ』とか、そんなのないよ」とTちゃんはあっさりと答えました。

NEXT過程を認め合う子どもたち
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