人って、自分がされたことには恩返しができるけれど、そうではないことに返すのは難しいんですよね。たとえば親子関係において、日ごろから誰かに感謝されている親御さんは、お子さんの予定外の行動も受け入れやすいと思います。でも自分が枯渇している時は、それができない。受け止める側に余裕がないのは大きいと思います。これが社会でも起きている。

■「多様性」を叫ぶほど「画一化」する!?

――「多様性を認めよう」という時代に、子どもの多様性を受け入れられなくなっていると。

 昔は多様性なんて当たり前だったわけで、それをわざわざ言わないといけないくらい画一化してきているのだと思います。たとえばメディアが発信する情報は、それが正解のように見えてしまう側面がある。親がそれを目指すべきととらえて、お子さんの行動のほうを間違っていると認識してしまうことがあると思います。ところが実際には当てはまらない、あれ?となる。わが子と周囲のお子さんを見比べるうちに、「ああ人それぞれなんだな」とわかってきて、わが子に「あなたはあなただよね」って言えるようになるまでには、15年くらいかかるんですね。

――私は子どもが3人いますが、1人目の時は「子育てはこうすれば大丈夫」という“正解”を求めていたところがあります。今、3人目でようやく「あなたは人と違うけれど、それがいいところだよね」と言えるようになりました。

 昭和から平成前期までの日本って、仕事に必要なことは会社に入ってから教わる形だった。でも今は、中学や高校で将来を考えましょうと言われる。すると、15年かけて子どもの個性を見つける余裕なんてない、早くしなきゃと思ってしまうんですね。

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