中学受験で志望校を選ぶ際には、卒業後の進路を考えることも重要です。変わりゆく大学受験の現状から、中高一貫校の学びで身につけたいことを学校法人河合塾教育研究開発本部主席研究員の近藤治さんに解説してもらいました。AERAムック『偏差値だけに頼らない 中高一貫校選び2024』(朝日新聞出版)から紹介します。

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大学志願者の9割が大学に入学できる時代

 この30年で、大学入試の環境は大きく変化しています。1992年では、高校を卒業し現役で4年制大学に進学する人は5人に1人でしたが、今は2人に1人。さらに大学志願者のうち入学できたのは54.2%だったのが、今では90%を超えています。

 つまり、4年制大学に進学すること自体が評価されていた時代から、どの大学に進学し何を学んだのかを問われる時代になったと言えるのです。

 入試方法に関しても、今の親世代が受験生だった頃の常識とは大きく変わってきています。

 30年前はほとんどの人が一般選抜入試を受験していたのに対し、2022年の調査では、総合型選抜(旧AO)入試(以降、総合型)と学校推薦型選抜入試(以降、推薦型)を利用する人が受験生のおよそ半分を占めるまで増加。

 面接やプレゼンテーションを通して受験生の学習意欲や適性を評価する総合型は、推薦型とともに、今の小学生が大学受験をする頃には、割合はもっと高くなっていることが予想されます。

学校生活全体を通して、子どもの思考力や創造性は養われていく

 大学には、世の中が求めている人材を育成して社会に送り出すという役割があります。大学入試はそのための選抜機能なので、その時代に必要とされる人材像が反映されていると私は考えています。

 30年以上前の日本は工業社会で、良質な製品を早く正確に作る力が求められていました。なので、たくさんの知識を整理し、正しく活用する技能を測っていたのです。

 一方これからの時代は、いろいろな人と協働しながら新しいものを生み出す能力が必要とされる知識基盤社会。知識・技能だけでなく、主体性・創造性・協働性が求められているからこそ、総合型や推薦型といった学習意欲や表現力をもとにその大学での学びに対する適性を測る入試方式の需要が高まっているのです。

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