さらに、子どもの骨折も増えているそうです。

「1970年から40年間で、小学生以上の年間骨折率は2倍以上増えたという報告があります。一方で幼稚園は横ばい、保育園はやや減少で推移しています。おそらく、未就学のうちは運動する機会が少ないために骨折も少なく、小学生以上で部活などを始めると体がついていかず、骨折しやすいと考えられます」

 子どもロコモは、姿勢と健康の両方に影響するのです。五つの基本動作を確認しましょう(図版参照)。

「一つでもできないものがあれば、子どもロコモの可能性があります。より運動を心掛けるほか、日ごろの姿勢も見直してほしいですね」

正しい姿勢が身につくと悪い姿勢が嫌になる

 子どもの姿勢を見直すにあたって、改めて認識したいのが「良い姿勢」「悪い姿勢」の違いです。

「ずっと画面を見て座っていると、あごを前に突き出し、猫背の状態になりがちです。これを正すには、後ろから腰部をグッと前に押して、骨盤を立てるように声をかけること。すぐに悪い姿勢に戻るかもしれませんが、大丈夫です。1日1回でも正しい姿勢をとることで、だんだんと身につきます」

 ある5歳の男の子は、スマホに夢中で運動不足。「腰が痛い」と林先生の元を受診しました。立つ姿勢は、顎とおなかを突き出し、骨盤が後傾していました。ところが、林先生が正しい姿勢を教え、家庭で体操を続けていると……。

「何度か通院してもらって経過を診たところ、背筋が伸びて、骨盤を起こして立てるようになっていました。 『前までの姿勢をとってごらん』と言っても『気持ちが悪いから』と嫌がりました。良い姿勢を体が覚えたのでしょう」

 子どもの姿勢を改善するには、家庭での地道な対策を続けることが欠かせないようです。

(取材・文/越膳綾子)

※「AERA with Kids 2023年秋号」から抜粋

林承弘さん
AERA with Kids (アエラ ウィズ キッズ) 2023年 秋号 [雑誌]

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越膳綾子
ライター 越膳綾子

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