■自分の子どもには、「きちんと知っておいてほしい」という親の気持ち

 最近は、性教育を意識している未就学児の親も増えてきているという。「情報も増えているので、知識を得やすくなりました。また、親世代に、自分たちが子どものころに『親にこうされて嫌だった』という経験や、『もっと早く知っておきたかった』という思いをもつ方もいらっしゃいます」(戸田さん)

 今、子どもをもつ親世代は、子ども時代に家庭や学校などで性についてきちんと学んだという人はそこまで多くないのではないだろうか。「だからこそ、大人になり、さまざまな経験を経た今、自分の子ども世代にはやはり『性について、正しい知識をつけてほしい』と感じるのではないでしょうか」(戸田さん)

 性にまつわる子どもからの王道の質問に「赤ちゃんはどうやってできるの?」「赤ちゃんはどこからくるの?」といったものがある。親は気恥ずかしくて、ついはぐらかしてしまいたくなる瞬間だ。「こんなときこそ『そうだね、気になるね。いっしょに調べてみようか!』と絵本などをながめて、子どもと楽しく学んでみるといいでしょう」(戸田さん)

 包括的な性教育をきちんと受けた子どもは、自分を大切にするという。「包括的性教育」とは、生殖のしくみや第二次性徴、性感染症予防のような、身体的な内容だけでなく、人権、差別や暴力、ジェンダーの不平等をなくす方法、性を安全に楽しむ権利など、幅広いテーマを扱う教育を指す。ユネスコの「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」では、「セクシュアリティの認知的、感情的、身体的、社会的側面についての、カリキュラムをベースにした教育と学習のプロセス」と定義されている。

「性の知識を幅広い側面から得ていると、たとえばはじめての性交渉の年齢が上がったり、性交渉の際には避妊や性感染症予防を行ったりするなどの全体的にリスクの高い行動が減るといわれ、ユネスコがエビデンスをまとめています」(戸田さん)

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