同じくファミワン所属の助産師・看護師の二宮さんは、「親御さんが子どもの発言を尊重してあげることも、性教育の第一歩です。なぜなら『親子関係』こそが、子どもにとっていちばんはじめの、そして基盤となる人間関係だからです」と話す。
たとえば、親子のくすぐりっこ。楽しくてほほ笑ましい場面だが、子どもが「やめて!」と言ったら、親はちゃんとやめてあげること。
「ちょっとしたことかもしれませんが、日常のこんなやりとりから、自分の意見がちゃんと聞いてもらえて、大切にしてもらえているんだということを子どもが実感できる。こんなふうに、未就学のうちから親が子どもの権利を守る環境をつくることが、未就学児に向けた性教育につながります」(二宮さん)
■「NO、GO、TELL」の大切さを、日常生活の中から積み重ねる
子どもと親を対象にしたファミワンの性教育セミナーでは、未就学児から小学校高学年まで、「プライベートパーツ」の理解を伝える。プライベートパーツとは、水着で隠れる部位と口のこと。とくに、水着で隠れるプライベートパーツは、他人に見せてはいけない・見てはいけない・たとえ保護者でも勝手に触ってはいけないことなどを説明する。そして、プライベートパーツを守る際に大切なことばも親子で学ぶ。それが次の3つ。
・NO!: いや! だめ! やめて!
・GO!: その場から離れる、逃げる、安心な場所・人のところへ行く
・TELL: 相談しやすい大人に話す、相談する
親は子どもに対してなにかと「~しなさい」と決めつけてしまいがちだが、子どもの気持ちをちゃんと確認することで、上の3つのことばを子どもに徹底することができる。たとえば、子どもの入浴や着替えを手伝う際、プライベートパーツに触れなくてはいけない場面は多々ある。こんなとき、黙って手を動かすのではなく「ここ、触っていいかな?」などとひと声かける。このやりとりが自然に交わされるうちに、子どもは「合意」の意味を知り、たとえ親子でも嫌なことは「NO(いや)!」と言っていいという、当然の権利を家庭で行使する。勉強のように「性」を学ぶのではなく、「自分が尊重されるべきひとりの人間である」ということを子どもが実感できること。これが性教育の軸になる。
次のページへ