金属バットも深海魚も、反抗の現れ方が違うだけ

 自分の意思で勉強をしない子は、まだ救いがあると西村先生は言います。勉強の必要性をわかっていてもする気になれない子、根は真面目なのに学習に嫌悪感をもってしまっている子は、家庭内暴力に発展するパターンもみられるそうです。

「勉強をしないことを責められてイライラすると、勉強を頑張らなくてはいけないという義務感が苛立ちに拍車をかけ、鬱憤を発散するため、最初は自分の拳で部屋の壁を殴ります。それではスッキリせず、足で壁を蹴飛ばすように。それでも足りないと金属バットを振り回すことに発展します」

 つまり、中学受験で溜まった親へのイライラが、受験終えて時間が経った後に爆発するのです。そういう意味では、深海魚と金属バットはほとんどイコール。無気力な深海魚なのか、行動的な深海魚なのか、反抗の表れ方が違うだけだといいます。

 西村先生自身、金属バットを振り回して暴れるご家庭に対応した経験があるといいます。1年前に指導を終えた子の親から「息子が暴れているからなんとかしてほしい」というSOSの電話が入り、彼の自宅へ直行。物の壊れ方が激しく、部屋はひどい状態だったそうですが、西村先生と話をすると落ち着いたそうです。

「彼は『いけないとわかっていても、どうしようもなかった』と漏らしました。受験時代は知らなかったのですが、彼にもやはり家庭教師が複数人ついていたそうです。宿題は少ししか出していないのにこなせなかったり、私が教えた方法と違う解き方をしていたり、当時から違和感はあったのですが。親が彼の思いに寄り添わず、何人もの先生にアウトソーシングをするという、『悪い伴走』が続いた結果でした」

悪い伴走の根底に潜む親のコンプレックス

 悪い伴走が常習化している家庭では、「親が望む進路を義務づけているケースが目立つ」と西村先生。東大や国立医学部の受験を決められていたり、子どもの頃から医師になるよう諭されていたり、強いプレッシャーのなかで勉強を継続している様子がうかがえます。

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