このことから、オジギソウが触れられたり傷つけられたりしたとき、カルシウムのシグナルが葉脈を伝わり、小葉枕の細胞内のカルシウム濃度が高くなって葉が閉じるしくみが明らかになった。

■葉を閉じることでバッタが食べづらくなる!

 では、オジギソウが葉を閉じるのは何のためなのだろうか? 研究グループは、閉じた葉の上には広がった葉に比べて昆虫が止まりづらいから、食べられにくくなるのではないかと考えた。そこで、ゲノム編集技術(※4)を用いて、傷つけたり触れたりしても葉を閉じないオジギソウをつくりだし、触れると葉を閉じる通常のオジギソウ(野生型)と隣り合わせに並べ、バッタに葉を食べさせてみた。そして、食べられる前後の葉の重さを比較すると、葉を閉じないオジギソウは、野生型に比べて約2倍も重さが減っていた。つまり、バッタは葉を閉じないオジギソウのほうをより多く食べていたのだ。

 また、この実験でも、光るオジギソウを用いて、バッタに食べられるときのカルシウム濃度の変化と、葉の動きや昆虫の様子を撮影した。すると、野生型のオジギソウでは、バッタが葉を食べるとカルシウムが伝わるのに連動して葉が次々に閉じ、その後、バッタは食べるのをやめ、ほかの場所に移動していくことが確かめられた。

 豊田教授は、これらの結果からわかることを次のようにまとめてくれた。

「オジギソウは昆虫などに傷つけられると、危険信号としてカルシウムと電気のシグナルを全身に伝達させ、葉を素早く動かし閉じることで昆虫から身を守っていると考えられます」

 バッタの実験を50回以上繰り返したという萩原さんは、この研究の先に次のような発展を夢見ている。

「オジギソウの運動のメカニズムがよりくわしくわかれば、ほかの植物も葉を動かせるようにできるかもしれません。そうなれば、農業に利用できる可能性もあると思います。オジギソウのように葉を動かせる農作物をつくれば、昆虫に食べられにくくなりますから、殺虫剤を使う量も減らせますよね」

オジギソウがおじぎをするしくみと理由のまとめ(画像提供/埼玉大学大学院理工学研究科博士課程・萩原拓真、豊田正嗣教授)
オジギソウがおじぎをするしくみと理由のまとめ(画像提供/埼玉大学大学院理工学研究科博士課程・萩原拓真、豊田正嗣教授)

 オジギソウは夏休みの自由研究で人気のテーマでもある。アイデアや調べ方次第では、キミの自由研究から、社会に役立つ成果が生まれるかもしれない。 

(取材・文/上浪春海)

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上浪春海
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